出版社内容情報
幕末の近江で古着を商う絹屋半兵衛は、妻留津とともに染付磁器に挑む。最初の窯での失敗、販売ルート開拓の困難など、様々な壁にぶつかりながら、何とか良質な「湖東焼」を作り出すことに成功するが……。
内容説明
彦根で堅実な呉服商「絹屋」を営む半兵衛は、磁器に魅せられ、蓄財をなげうってやきもの作りに挑む。技術と資金の不足に苦しみながらも、妻・留津と手を取り合い、近江で京の磁器を超えると豪語する。試行錯誤の中、「湖東焼」は若き井伊直弼の心をも捉えるが、幕末の動乱が彼らの運命を呑み込んでゆく―。経済小説の名手が新しい産業への挑戦を題材に、変わりゆく時代と貨幣経済の発展を描ききった、歴史経済長篇の金字塔!
著者等紹介
幸田真音[コウダマイン]
1951年生まれ。米国系銀行や証券会社で、債券ディーラーなどを経て、95年『回避(ザ・ヘッジ)』(文庫版は『小説ヘッジファンド』と改題)で作家に。2000年に発表した『日本国債』は日本の財政問題に警鐘を鳴らした作品としてベストセラーになり、多くの海外メディアからも注目を浴びた。作品多数。テレビやラジオでも活躍し、政府税制調査会委員など数多くの公職も歴任。『天佑なり 高橋是清・百年前の日本国債』にて第33回新田次郎文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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こうちゃん
7
たっぷりとした読み応え。でも繰り返しだったかなとも思うけど、物を造る、国を造るって、繰り返して積み重ねてゆく事なのかも。湖東焼は、井伊直弼が暗殺されなかったら、どれ程凄い焼き物になっていたのだろうか。なんとも惜しい。2021/03/29
ゆうこ
6
1人の呉服商が生涯をかけて興した焼き物「湖東焼」の話であり、彦根藩が藩窯として広げた焼き物の話でもあり、幕末動乱の中で日本のこれからを考え抜いた井伊直弼の話でもある。青味かがった素地、土物には出ない薄さ、赤絵付けに合う白い素地。絹屋半兵衛の執念にも似た強い思いと、その気持ちに惹かれるように集まり技術を高めて行った職人たちによって作られ、その焼物と半兵衛の人柄に惹かれた直弼によって国産品へ高められた。桜田門外の変で直弼が亡くなりやがて湖東焼も衰退していく。素晴らしい本に出会いました。湖東焼、見てみたいです。2020/02/15
sai
3
古手呉服商として成功していた半兵衛が磁器に魅せられ窯作りから個人で人手を集めて作り上げていく。しかしながら販売販路に食い込めなかったり、藩用に摂取されたりして個人としての無力さがひしひしと伝わってきた。2020/03/14
Ayako H
2
買いました。工芸、特に陶磁器は好きなのに浅学にも湖東焼を知らず興味津々で読み始めました。新しいことを始めるのはワクワクして楽しい、おもしろいですよね。まさに主人公半兵衛がその状況で苦労も楽しく読めました。焼き物が縁で親しくなった鉄三郎の話も歴史のおさらいのように興味深く読んでいました。が、お二方とも苦労が絶えず、特に上に立つ人がロクでもないとその周りも当然それなりしかいなくて、嘆かわしいことになってしまう。今の世の中も同じだわね。残念なことに彦根の湖東焼は絶えてしまって残念。でも技術は継承されてよかった。2020/05/26
幻の瀧
1
☆☆☆2020/05/06