内容説明
破綻寸前に追いこまれた大手生命保険会社・清和生命。顧客からの解約、経営統合のキャンセルなど八方塞がりの状況の中、業界の暗部を歩んできた社長室次長の各務と、彼の同期で関西に左遷された中根は、生き残りのために奔走する。崖っ縁に立たされた彼らは、社長の命を受け最後の大きな賭けに打って出たが…。真山仁が『ハゲタカ』刊行前年に大手生保社員と合作で発表した幻のデビュー作、ついに文庫化!
著者等紹介
真山仁[マヤマジン]
1962年大阪府生まれ。同志社大学法学部政治学科卒業。読売新聞記者、フリーライターを経て小説家に。2004年、熾烈な企業買収の舞台裏を描いた『ハゲタカ』でデビュー
香住究[カズミキワム]
真山仁と大手生命保険会社でMOF担、商品開発室課長の合作のペンネーム。生保社員は2001年に退職後、上場会社の企画関連部門長を経て、現在は家業を継ぎ、都内でビルオーナーの傍ら交響楽団の理事を務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
307
久しぶりの真山作品再読。著者の作品の中でも実はかなり好きな方。話の内容としては、実は1ページ目からすでに破滅は確定しているような状況の中で、特に何も好転せず、主要人物に自分を重ねて、周囲への空虚な誤魔化しに、ともにストレスを感じて重たい気分を味わいましょう的なもの。ただ、ラストの各務の台詞でグッと来てしまい、お気に入り度が急上昇した。現実の事件の方はもうほとんど記憶も残っておらず、そちらを意識した読み方はしなかったが、完全なフィクションだとしてもちゃんと面白い。 2019/09/10
小説を最初に書いた人にありがとう
84
バブルから不況までの生保企業を舞台にした経済小説。しかし、単に経済だけではなく、働くとは?友情とは?家族とは?等々色々な切り口で人生を考えさせられた。真山作品が好きでいろいろ読んできたけど、たいていが登場人物がプライドを持って仕事をしているところに惹かれるし憧れを感じる。こんな風に働いてみようかな。2015/01/15
佐島楓
45
生命保険会社の内情に切り込んだ経済小説。真山さんの幻のデビュー作ということからか、キャラクターは弱く、女性の心理描写など細かい技術的なところがいくつか気になったけれど、この世界が狐狸の化かし合いだということは伝わってきた。これほど悲しい生き方しかできない人間もいるということか・・・。2015/02/09
kotte
35
真山仁さんのデビュー作です。破綻寸前に追い込まれた大手生命保険会社、清和生命で働く「人」にスポットライトを当てて書かれた本です。500頁越えのボリュームを感じさせず、一気に読めます。生命保険会社の裏側は全く知りませんが、本書に書かれているような契約者と生命保険会社の利害相反はありそうですね。会社組織を採っている以上、利益を出すことは重要なのは理解できますが、コンプライアンスは守るのが前提での利益です。本書で書いている時代は抜け道を探して儲けるのが当然だった、なんでもありの時代だったんでしょうね。2017/03/10
だいきょ
32
経済小説は大好物だけど、生保を舞台にした話は初めて。二章から俄然面白くなった。真山さんがこの翌年にあの「ハゲタカ」を出したと聞き納得。本作も死に体に追い込まれた企業のヒリヒリした感じが伝わってくる。舞台となる清和生命には実に多くの人間がいるが、半沢直樹の配役に近いキャラが大勢いることに気が付く。金融機関の魑魅魍魎の構造は似ているのか。清濁併せ呑みつつ高潔なトップ高村に惹かれる。岩倉専務はかつての上司を思い出して苦笑。ラストはサドンデス的で呆気ないが自身で幕を降ろせたのは爽快。それにしても闇の多い世界だ。2015/02/15