内容説明
反政府的な立場を貫いたために、国を追われた人気作家・三宅。父親が去ってから、公安警察に四六時中見張られている娘の志穂の耳に、三宅の訃報が届く。遺骨を引き取ろうと、北欧の町へ向かう。飛行機の出発を待っていると、政府の要人である中田が乗り込んできた。志穂の見張りと、三宅の死が確実なものか、確かめるためらしいのだが…。最果ての地で、志穂と中田を待ち受けていた衝撃の真実とは…。サスペンス・ロマン。
著者等紹介
赤川次郎[アカガワジロウ]
1948年、福岡県生まれ。76年、「幽霊列車」で第15回オール讀物推理小説新人賞を受賞し、デビュー。作品が映画化されるなど、続々とベストセラーを刊行。2006年、第9回日本ミステリー文学大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ポップノア@背番号16
72
日本では名の知れた小説家の三浦邦人。反政府的な言動ゆえ公安に監視され、今は北欧の小さな港町で静かに暮らしている。そんなある日、漁師の死体を発見するが、「三浦の死体が発見された」と発表した新聞社の誤報から歯車が動き出す。赤川さんにしては珍しくシリアスな作品。日本に残された娘と孫娘も数々の嫌がらせを受けていると推測され、不都合な真実を揉み消そうとする政府の傲慢さには腹が立つし、06年の発売ながら何故か某政権と重ねて読めてしまう。「僕たちの国は大切な処で道を間違えたようだ」と歌うさだまさしさんの曲を思い出した。2020/11/30
coco夏ko10角
24
今まで読んだ著者作品の中で一番政治に関するメッセージがこめられていた。飯城勇三さんの解説がよかった。2015/08/29
niisun
16
先日、読メに「重松清作品久しぶり」と書きましたが、赤川次郎さんはそれと比較にならないくらい久しぶりでした。この作品、赤川さんらしい部分もありますが、そうでない部分の方が際立っています。氏の作品には珍しく、此の国というか政治に対するメッセージが込められています。2004年の作品で、当時の小泉政権が頭に浮かびますが、幸か不幸か、現政権下で読む方がより切実さを感じます。慢心しつつ邁進する政権と少しずつ諦め、妥協する国民の行き着く先を描き出しています。村上龍氏の小説を読んだような読後感ですね。面白かったです。2014/12/16
ヂャニスちゃん
9
とっても素敵な本だった。海外に出て感じたのは、日本に対する希望、そしてそれを大きく上回る失望。日本には豊かさがない。設定はもちろん全然ちがうけれど、それを素晴らしく表現しているような気がしてしまった。おすすめ @Seoul2015/04/28
魔魔男爵
6
安倍晋三のような軍国主義大好きの総理大臣が日本を支配している未来。小説家も完全統制されようとしていた。かつての人気作家の三宅は愛国心を高める小説を書くように強要されたが、普通の愛を賛美する恋愛小説を書いた為、日本に居られなくなり、国外逃亡する。三宅の娘は工員として油塗れで働いていたが、安倍もどき首相に抗議する為プラカードを掲げて首相専用車に接近した女性が無惨に警察に殺される場面を目撃して、日本に絶望する。報道管制がひかれていて女性の死は報道すらされない。日本も自分も捨てて逃げ出した父に文句を言ってやりたい2017/07/23