感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
seri
64
音感妙なる文体、凄艶な描写、幽玄たる美しさ、そして苛烈極まりない人の情。まるで一幅の絵画を管弦の調べと共に味わったかのような、または浄瑠璃舞台を観たかのような感慨を残す。物語とはかくも純粋な芸術であったかと認識を新たにさせる。それは最早、音楽にも似て。鏡花文学は文学というより文楽に近いのではと思う程に。「義血俠血」は漢詩故事に、「外科室」はその余韻の持たせ方といい和歌に、「高野聖」「眉かくしの霊」はそれぞれ幻想譚、怪談に通じるようでいて味わい深い。鏡花水月の美しさにすっかり魅せられ戻れそうにない。2016/08/04
まさ
32
表題『高野聖』のほか、『義血侠血』『夜行巡査』『外科室』『眉かくしの霊』の計5編の1冊。なんて贅沢な！以前読んだときとは感じ方が異なるのは読む量が増えたから？1編目の『義血侠血』から情景を想像しながらリズムよく読めた。そして、考えさせられる作品たち。思い耽けりながら読むので時間もかかる。読み終えて、鏡花作品への理解がまだまだ足りないのでは？とも考えてしまう。何度も読もう。2020/07/25
taku
20
独特のリズムで流れる、華やかな文語により品を高めた文体とでもいうか、その雰囲気に誤魔化されそうになるけど、ストーリー自体はシンプル。作者の意図を見つけるような読み方ではなく、そのままを堪能するのが鏡花文学だと感じた。表題作を含む後半二編の怪異譚より、男女の関係や会話を楽しめる前半三編の方が好み。『義血侠血』の白糸姉さんがいいね。嫣然一笑せり。2016/01/13
マッピー
16
この本を読むまで全く知らなかった「義血侠血」が良かった。父の死で学校を諦めざるを得なかった、法学士志望の乗合馬車の御者の青年。美貌と気っ風のよさで人気の女芸人。ひょんなことから知り合ったふたり。彼女は彼に夢を託す。平凡な幸せという夢を。そのため、彼の学生生活を援助し、彼の母親の面倒を見る。ああ、何でこんなことになってしまったんだろう。自分のできる範囲で、精一杯生きてきたのに。彼と彼女は出逢わないほうが良かったのだろうか。いや、不幸ではないが幸せでもない人生より、一瞬でも幸せだった方が良かったのだろう。2023/04/28
はじめさん
10
2017年8月20日（日）香川県高松市郊外で「高野聖」読書会やります！ https://i.bookmeter.com/events/4502
