出版社内容情報
必敗の対米開戦を決定づけた「空白の一日」、ルーズベルトが日本に仕掛けた「罠」、大杉栄殺害の真犯人、瀬島龍三が握りつぶした極秘電報の中身──。歴史は陰謀に満ちている。あの戦争を中心に、明治以降の重大事件の裏面と人物の命運を検証し、真実を明らかに。
内容説明
いつの世も、知恵と知恵の戦いが歴史をつくる。時にそれを「陰謀」という。よく知られた史実も本来は何者かの陰謀の産物かもしれない―ルーズベルト、近衛文麿、東條英機、西郷隆盛、伊藤博文、昭和天皇、甘粕正彦、中野正剛、大西瀧治郎、瀬島龍三…。彼らが関わった大事件や、歴史上のふるまい、そしてあの戦争の帰趨には知られざる裏がある。近現代史の第一人者が「真実」を史料と証言で徹底的に解明する!
目次
第1部 陰謀の近現代史(仕組まれた日米開戦;事件の伏線、人物の命運)
第2部 歴史から問われる、大局観(戦争に凝縮された日本的特質;歴史の闇を照射する記録と証言)
著者等紹介
保阪正康[ホサカマサヤス]
1939年、北海道生まれ。ノンフィクション作家。同志社大学文学部社会学科卒業。編集者を経て作家活動に。「昭和史を語り継ぐ会」主宰。延べ4千人に及ぶ関係者の肉声を記録してきた。2004年、第52回菊池寛賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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trazom
84
保阪さんの昭和史は、生存者からの丹念な聞き取りをもとにした説得力がある。本書でも、今まで気づかなかった視点にハッとする。日露戦争と太平洋戦争の開戦時の違い(当初から講和を意識して金子堅太郎をアメリカに派遣していた伊藤博文)、大正時代の最後の五年間(皇太子が摂政)は軍事が全く動かないのに昭和に入って軍部が暴走、明確であった筈の軍令と軍政の区別を曖昧にした東條内閣の末期、吉田茂による緊急勅令案(日本人による東京裁判)など。「止められない空気」「楽観的願望ばかり」「情報の軽視」…コロナや五輪が重なって見える。2021/04/30
hatayan
52
昭和史の著作を多く持つ保阪正康氏が約80年前の先の大戦を開戦前夜、戦時中、終戦間際に分けて、日本が道を誤った原因を場の空気によってものごとを決める非科学的な精神論が幅を利かせていたからと総括。都合の悪い情報を天皇に隠し続けた海軍の嶋田繁太郎、天皇は戦争を進めたいと信じ込み自ら暗示にかけた首相の東條英機を明治の伊藤博文らと比べつつ特に厳しく批判。一方軍国主義と植民地を棄てることが損切りを試みようとした石橋湛山を大局観ある政治家として高く評価します。きわめてまっとうな日本近現代史の入門書として読める一冊です。2021/05/02
kawa
34
戦争の設計図を描かず戦いにのめり込んでいった戦前昭和の軍部の横暴、混迷ぶりと、保身体質が印象的。そこを制御するのが政治の役割だったのだろうが、リーダーの一部が統帥権という化け物を振り回し、そこにマスコミ・大衆が巻き込まれ、否、積極的に加担していったというのが、大体のデッサン図か。様々な歴史の中での人間の愚行を振り返って、どんな政治・社会体制を構築するかを議論することが必要なんだろう。それが、歴史を総括し学ぶということだろうと思う。今、果たして日本は、世界は…?2021/09/30
さこちゃん
21
現実を直視せず、精神論で片付けようとするのは、遥か昔から続く日本人の国民性なのか。それも希望的観測で楽観視して。今のコロナや外交政策でも、あまり変わっていない様な気がしてならない。たまたま上手くいった経験を実力だと勘違いする、大丈夫なのか、日本は。2021/04/17
CTC
14
1月の朝日新書新刊。下品な二重表紙を巻いている。効果があるのだろうか。元は日刊ゲンダイ(同紙は名前の通り講談社系の出版社刊行なんですね、新聞協会には加入せず雑誌協会に加盟しているそう)の連載「日本史縦横無尽」だそう。内容の面も本書タイトルは羊頭狗肉である。そのように纏める意思もないのだろう。著者は81歳だから…もう新しいものを生み出す事も難しいだろうし、この下っ品な表紙ゆえに買うつもりはなかったんだが…捻りのあるタイトルに目次位見るわな、瀬島龍三の名やらUSSBSの名があるから…つい買ってしまったしだい。2021/01/19