内容説明
剣の道を極め、「兵法者」として頂点に立ちながらも、「軍学者」としての処遇を求め続け、野望と出世欲を捨て去れなかった宮本武蔵。才気溢れるゆえの自負と屈託、天才と紙一重の狂気など、その人物像を生い立ちから丹念に追い、新たな武蔵像を描き出した司馬文学の新境地。
著者等紹介
司馬遼太郎[シバリョウタロウ]
1923年大阪府生まれ。大阪外事専門学校(現・大阪大学外国語学部)蒙古科卒業。60年、『梟の城』で直木賞受賞。75年、芸術院恩賜賞受賞。93年、文化勲章受章。96年逝去。著書に『国盗り物語』(菊池寛賞)、『世に棲む日日』(吉川英治文学賞)、『ひとびとの跫音』(読売文学賞)、『韃靼疾風録』(大佛次郎賞)、など多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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たつや
50
司馬さんが実際に武藏の出生地に出向くシーンから始まり、吉川英治婦人と一日違いで二アミスしているのが、少し、運命的だと思う。武蔵については、駆け足でダイジェストといった印象ですが、その分、内容が濃く感じた。晩年はたくさんの、逸話が残されてるようですが、残念ながら、ページの都合で割愛されました。2016/11/15
kawa
37
司馬先生には珍しい?中編250頁。武蔵の人生とエッセンスを過不足なくドキュメント風にまとめ上げた印象。サクサク・スピーディーに読了、これはこれで楽しめた。武蔵は、例えるなら年収5,6000万円の取締役執行役員への就任を望んだのだが、暗に相違して、1000万円程度の技術者職の提示を受けたということだろうか。武芸者に対するあの時代の評価の低さには驚くが、それだけに晩年、肥後・細川家に「堪忍分の合力米」という特別な待遇で召し抱えられたのは良かったのではないかな。2018/07/01
フルケン
35
司馬遼太郎版の宮本武蔵は、吉川英治版と違い、淡々とその人物像に迫る内容。宮本武蔵の生涯を、やや駆け足で辿って行く。徳川家に高禄で仕官を求める姿は、孤高の剣士という私のイメージからはやや遠いが、より俗っぽくて人間臭く、そこが逆に面白かった。尾張徳川家の指南役、柳生兵庫助の分析によれば、武蔵の強さは技術体系の卓抜さにあるのではなく、彼自身の体に備わった固有の精気を用いる、故に他人には教えられない。この文章に納得。やはり、武蔵は唯一無二の兵法者であると思う。2016/02/08
しーふぉ
30
軽めな記述です。吉川英治版宮本武蔵を読みたくなった。柳生兵庫助は武蔵固有の気が武蔵の剣には必要だと尾張藩への仕官を諌めた。表現は平易なのに後継が育たなかった宮本武蔵の本質を言い表しているのかも。2017/02/08
aponchan
21
司馬遼太郎氏作品乱読のうちの一冊。固有名詞での作品は氏の作品として珍しいと思いながら、読了。なるほど、小説というよりは宮本武蔵伝という感じの作品だった。宮本武蔵のイメージはあまり無かったが、この作品はその点、人物像を理解しやすい。2021/12/15