内容説明
夏芙蓉の花に戯れる金色の小鳥のように朋輩と群れ集っていた荒ぶる魂タイチ。そのタイチは極道同士の熾烈な闘いの果てに凄惨な死を迎える。語り部オリュウノオバとトモノオジによる、時空を超えた宇宙〈路地〉の最後の物語が始まる…。闘いの性と淫蕩の血を刻み込まれた若者たちの貴種流離譚。
感想・レビュー
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zumi
5
この酒には涙がよく似合うーー。秋幸三部作から続くテーマの内の一つ、「自然との融合」が色濃く描かれる。路地の生死を見届けるオリュウノオバの周囲で、次々と荒ぶる血は夭逝する。タイチもまた逃れることはできない。海へと、ただ海へとタイチは沈む。鳥はタイチを追い、紀州の海が包み込む。仮に、もしトモノオジが見たものが、精気溢れる巨大な魚ーータイチだったとしても、その幻想をただの悲しみと結びつける権利は誰にもない。いかなる「愉楽」にも代え難い、路地の温もりと憎しみに眩暈を覚える。2014/01/17
