内容説明
16世紀前半、海の都ヴェネツィアはトルコ、スペイン、神聖ローマ帝国の3強大国に挾撃され国家存亡の危機に瀕していた。国難にあたる若きヴェネツィア貴族と謎のローマの遊女、貴婦人との秘めた愛を胸に野望を抱く元首の庶子…。権謀術数が渦巻く地中海世界を描いた、ルネサンス歴史絵巻第1部。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
miww
101
ルネッサンス衰退期、16世紀のヴェネチア共和国時代を舞台にした上質な歴史小説。主人公以外の人物は実在し、物語は史実に基づいている。学生時代以来何十年ぶりに読んだ歴史小説だったが塩野さんの作品は骨太なのに繊細でとても読みやすい。ヴェネチア貴族の嫡子として生まれたマルコ。その親友アルヴイーゼは元首の子ながら嫡子ではなかったが故の運命に抗う姿が切ない。身構えて読んだが水の都ベネツィアの魅力とその歴史を堪能できた。三部作のようなので早速「銀色のフィレンツェ」いきます。2017/05/07
かのこ
61
「歴史小説」を紹介する読書会でのご紹介本&お借りした本。世界史の知識がないので、作品当時の歴史的背景にピンとくる所は少なかったけど、硬質な文章で綴られる、中世ヨーロッパを舞台にした一瞬の栄華と滅びの物語。幼馴染のマルコとアルヴィーゼの大きな立場の違いや、アルヴィーゼとプリウリの奥方の情熱的な愛、二人の流転などなど、幾つもの国を跨り展開していくストーリーは読み応えがあり、作品の世界観に入り込んで読んだ。なぜタイトルが殺人事件なのかも、読み終えると納得。海外歴史小説もいいなあ!とこの作品を読んで思いました。2017/11/02
大阪魂
51
16世紀のヴェネツィア、フィレンツェ、ローマ。ルネサンス期は栄華誇った都市たちが、台頭してきたスペイン、オスマントルコ、神聖ローマ帝国に挟撃され没落してく歴史を、架空の貴族を主人公にして綴る三部作!第一話の主役はヴェネツィア!ヴェネツィア元首の庶子アルヴィーゼはトルコのスレイマン大帝に気に入られ重臣に出世、でも八方美人外交しやんとあかんヴェネツィアは彼の友人マルコを使いつつのらりくらり…そのうちトルコの権力争いに巻き込まれて…💦副題「聖マルコ殺人事件」は意味なかったよーな…中世イタリアの勉強にはなった!2024/01/08
優希
45
サブタイトルが殺人事件とあるのにそそられますが、言葉から想像されるようなミステリーではなく、立派な歴史絵巻になっていてそこが凄く面白かったです。トルコ、スペイン、ローマ帝国の3国により国家存亡の危機に陥っているところからゾクゾクしました。陰謀と権力が渦巻く歴史を凄く色鮮やかに描いていますね。聖マルコを守護聖人にしていた国がアルヴィーゼ・グリッティを死に追いやってしまうのが恐ろしさだなと思います。アルヴィーゼの死がタイトルと繋がり、主人公が都市なのが生きていると感じました。視点1つで面白くなるんですね。2014/08/31
takaya
31
16世紀のヴェネツィアを舞台にした歴史小説。ヴェネツィアとトルコの外交関係を中心に権謀術数渦巻く壮大な歴史が展開します。目に浮かぶような美しい風景描写も相まって、異世界に連れていかれる魅惑的読書経験になります。2020/08/29