内容説明
「イザナキ、イザナミの人物像は」「黄泉の国はどこにあったのか」「三種の神器・八咫鏡に有力候補」「古代出雲の姿とは」…日本神話に秘められた古代史の真相に、考古学の成果と実地踏査から迫る。考古学者である著者が、タブーとされたテーマに挑んだ問題作。
目次
国生みとイザナミの死(国生み物語と海上交通;黄泉の国の世界)
三種の神器(草薙剣;八咫鏡;八咫鏡(続)
八坂瓊勾玉)
出雲と日向(大国主命と出雲の古地形;海幸・山幸と隼人地域;“神代三陵”と隼人文化)
神武東征(船団による移動;高地性遺跡と戦乱の時代;河内の“湾岸戦争”から熊野への迂回;ウダでの山地戦から大和平定へ)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はるわか
9
【国生みとイザナギの死】矛と塩、海上交通、海船の遡る川、海をまたぐ出雲。【三種の神器】出雲にあった草薙剣(荒神谷遺跡)、伊勢にたどり着いた八咫鏡、神宝を磨いた丹生水銀、太陽を造形した伊勢大神、獣の腹から出た八坂勾玉、越の国とヒスイ峡。【出雲と日向】海をまたぐ出雲郡域、日本海沿岸の潟港と巨木文化、海神の宮を思わせる唐古・鍵遺跡の土器絵画、南九州と天皇家の遠い祖先、前方後円墳(西都原古墳群)。【神武東征】船団による移動、九州から大和へ、東征以来の宿敵物部。2019/06/28
うえ
7
「数年前に関心の集まった奈良県斑鳩町の藤ノ木古墳…数百年前にも信仰の目的で人びとが石室内に入った痕跡が残されていた。新しい時代の灯明皿を古墳時代の土器の上に置いたり、古墳時代の土器を灯明皿を置く台に転用していたことがその証拠である。つまり横穴式石室というのは、埋葬後に人が入れることを前提につくったものなのである」「最初に安置された遺骸が白骨化すると、石室の奥に集められ、次の死者に中央の場を譲っている」 みかけのうえでの多数の人骨は同時埋葬ではなく、数十年の追葬で結果的に多数埋葬の形になったのだという。2019/03/04
活字の旅遊人
6
発掘されたところからの推測。方法として、王道。2001年に読んだらしいが、おもしろかった。2001/12/31
讃壽鐵朗
2
神話が何かの考古学的・歴史学的事実と関連性があることが示されていて、実に興味深い。しかし、学会的な評価はどうなのだろうか。2013/08/30
Takashi
1
仕事上の関係で再読。記紀神話をたんなる非現実として考古学の対象から分離してしまうのでなく、考古学の知見とのかかわりを積極的に見出そうという筆者の姿勢に共感する。そして、一見すると現実離れ(現代人の思考から言えば)とも思える事象を、民族学や神話学からの知見も織り交ぜて解釈する、筆者の膨大な知の世界を垣間見ることができる。一例として、尾のついた人の解釈には唸らされた。もちろん、解釈を鵜呑みにできない点もあるが、考古学史とは考古資料の解釈史の変遷なのだから、ここではどうのこうの言わないでおく。2017/04/08