出版社内容情報
国の規制が増し監視ドローン飛び交う息苦しい社会で、負けじとタフに生きる母姉弟の入谷家。一家は不思議な力を持つ"カザアナ"と出会い、人々を笑顔にするささやかな奇跡を起こしていく。読めば心のびやか、興奮とサプライズに満ちた近未来のハッピーエンタメ。
内容説明
平安の昔、石や虫など自然と通じ合う力を持った風穴たちが、女院八条院様と長閑に暮らしておりました。以来850年余。国の規制が強まり監視ドローン飛び交う空のもと、カザアナの女性に出会ったあの日から、中学生・里宇とその家族のささやかな冒険がはじまったのです。異能の庭師たちとタフに生きる家族が監視社会化の進む閉塞した時代に風穴を空ける!心弾むエンターテインメント。
著者等紹介
森絵都[モリエト]
1968年東京都生まれ。早稲田大学卒業。90年「リズム」で講談社児童文学新人賞を受賞しデビュー。95年『宇宙のみなしご』で野間児童文芸新人賞、産経児童出版文化賞ニッポン放送賞、98年『アーモンド入りチョコレートのワルツ』で路傍の石文学賞、『つきのふね』で野間児童文芸賞、99年『カラフル』で産経児童出版文化賞、2003年『DIVE!!』で小学館児童出版文化賞、06年『風に舞いあがるビニールシート』で直木賞、17年『みかづき』で中央公論文芸賞を受賞、本屋大賞二位(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
532
これまでに私が思っていた森絵都とは随分違う。まず、文体がライトノベル風、もしくは同人誌風である。国力が疲弊し、観光立国として生き延びようとする日本。そこは中国以上の超監視社会といった近未来SFなのだが、その設定自体は今日的であるものの、物語の構想も人物像の設定もいたって軽い。ここまで来たら、もう自分の好きなように書くという作家の意志が先行するかのようだ。書いている作家は楽しいだろう。また、これを大いに歓迎する読者もいるだろう。ただ、私がひたすらに惜しむのは、抒情を失ったことである。2023/01/31
starbro
386
森 絵都は、新作中心に読んでいる作家です。著者の新境地でしょうか?本書は、近未来風穴幻想譚の連作短編集でした。 但し、残念ながら、著者のライブラリーに風穴を開けるよう快作ではないような気がします。2019/07/29
ウッディ
283
いにしえの日本に自然と心を通わせ、不思議な力を持ったカザアナと呼ばれる人々がいた。AIによる監視が進み、不自然なまでに日本らしさを強制された近未来の日本で、カザアナの末裔たちが活躍する。引きこもり問題、外国人労働者の待遇、環境破壊等々、現在の日本にも通じる社会問題と管理社会の怖さをコミカルなタッチで描いていましたが、全てが上手く行きすぎで、リアリティが感じられなかった。AIで暮らしは便利になるのだろうけど、プライバシーや自由を犠牲にするより、不便であっても豊かだった昔の暮らしに回帰する日が来るのかも・・。2019/11/22
こーた
271
もはや虚構としかおもえない政治や社会に風穴を開けるのは、ひょっとするとこんな小説なのかもしれない。過去の人物が近未来で織りなすのは現在の物語だ。日本スゴイの成れの果てに広がる悍ましいディストピア。だがそこに生きる子どもたちは、いつの時代もそうだが、朗らかで力強い。痛烈な社会諷刺と政治批判をまじえつつ、決して深刻にならず、また笑いを忘れない。平安末期と五輪後が交錯する物語が描くのは、徹底して子どもたちの問題だ。こんなにも彼ら彼女らの目線に立てるのかと驚く。あるいはこれは現実に敗北しつつある大人の著者が、⇒2020/05/06
ゆのん
245
【NetGalley】2019年、1冊目に読んだのが『みかづき』。それ以来の森絵都作品。近未来の日本と後白河帝の時代のオーバーラップが面白い。SFのような感じもするがSFを苦手とする私でも何の抵抗感も無く楽しく読めた。登場人物たちの突飛な言動は笑いを誘う。1972019/06/17