出版社内容情報
近所に住む「むらさきのスカートの女」と呼ばれる女性が気になって仕方のない〈わたし〉は、彼女と「ともだち」になるために、自分と同じ職場で彼女が働きだすよう誘導する。『あひる』『星の子』が芥川賞候補となった話題の著者による待望の最新作。
内容説明
近所に住む「むらさきのスカートの女」と呼ばれる女性のことが、気になって仕方のない“わたし”は、彼女と「ともだち」になるために、自分と同じ職場で彼女が働きだすよう誘導する。『あひる』、『星の子』が芥川賞候補となった話題の著者による待望の新作中篇。
著者等紹介
今村夏子[イマムラナツコ]
1980年広島県生まれ。2010年「あたらしい娘」で太宰治賞を受賞。「こちらあみ子」と改題、同作と新作中短編「ピクニック」を収めた『こちらあみ子』で2011年に三島由紀夫賞受賞。2017年『あひる』で河合隼雄物語賞、『星の子』で野間文芸新人賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
1552
本書は第161回芥川賞受賞作だが、今村夏子はそれ以前にすでに4冊の小説集を上梓し、太宰治賞や三島由紀夫賞など4つの賞を得ている。その意味では、芥川賞というには今さらの感がなくもない。ただし、本作がそれに相応しいことには全く異論はないのだが。さて「むらさきのスカートの女」は常に「わたし」によって見られている。それも執拗なまでに。ストーカーだと言ってもいい。その意味で彼女は純然たる客体である。彼女は変か?と言えば、スカート以外はそれほど変ではない。むしろ変なのは「わたし」の方なのである。⇒2020/09/11
starbro
1356
第161回芥川賞受賞作・候補作シリーズ、3作目(3/5)です。第157回芥川賞候補作『星の子』に続いて、今村夏子、3作目です。前候補作、2作の方が出来は良い気がしますが、本作はインパクトがあり、芥川賞受賞となったのでしょうか?表紙が何故むらさきのスカートでないのか?むらさきのスカートの女の本名は何故普通なのか?等、謎は深まるばかりです(笑)2019/08/13
パトラッシュ
1332
ストーカーされていた「むらさきのスカートの女」が徐々に普通の女に変わっていき、していた語り手の「黄色いカーディガンの女」の奇妙さが昂進してくる。しかも最後は二人が入れ替わってしまったような不可思議さで、理由のないまま理性のタガが外れていく人の怖さに震える。淡々とした筆致で狂気を描写するテクニックは見事だが、説明もなく放り出された読者には何とも後味が悪い小説。登場人物の奇矯な行動も、ユーモアというより『スリラー』のMVに出てくるゾンビだ。ここまで異常性が突き抜けると、正常と異常の境目が見えなくなってしまう。2020/12/27
zero1
1331
前にも書いたが、今村の才能は天井知らず。危ない人たちを興味深く描写できる作家はほとんどいない。しかも不気味なのにページを繰る手が止まらない。笑えて楽しめた芥川賞作品としては「コンビニ人間」や「乙女の密告」以来ではないか。ある女を別な女が監視する。そこには【正常】なんか無い。読んでいて思い出すのが「幽霊たち」(オースター)。両作品を読んでいればその意味を理解できる。今村はいつも斬新な内容で読者を驚かせる。稀有な作家と同じ時代に生きていることを幸福に思う。これからも独自の作品世界を貫いてほしい。2020/03/20
しんごろ
1215
色的に言えば、むらさきのスカートより、黄色いカーディガンの方が目立つだろう。しかもやってることは、おいおいストーカーじゃねえか。なぜ気づかないんだ。存在感を消すのうますぎるじゃないか。友達になりたいためにここまでするのかあ。怖いわ~。もう一つの地球というか、別世界で起きてる出来事に当たり前のように思える。終盤は怒濤のたたみかけ!読むスピードが一気に上がりました。ユーモアも加味され、今村夏子ワールドここにあり!しっかり堪能しました。2019/06/30