出版社内容情報
主人公・林ちひろは中学三年生。出生直後から病弱だったちひろを救いたい一心で、両親は「あやしい宗教」にのめり込んでいき、その信仰は少しずつ家族を崩壊させていく。前作『あひる』が芥川賞候補となった著者の新たなる代表作。
内容説明
大切な人が信じていることを、わたしは理解できるだろうか。一緒に信じることができるだろうか…。病弱なちひろを救うため両親はあらゆる治療を試みる。やがて両親は「あやしい宗教」にのめり込んでいき…。第39回野間文芸新人賞受賞作。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
1169
家族小説である。ベストセラーになっているが、プロットにも人物造型にもとりわけインパクトがあるとは思えない。あるいはむしろ普通の家族が描かれるからこそ支持されているのかもしれない。両親も、語り手の「わたし」もごく普通である。もちろん、そうは言っても姉は家族からこぼれ落ちているし、両親はカルトめいた新興宗教に捉えられている。幾分かは覚めた視点を持ちつつも、わたしもまたその宗教の集会等には熱心に通っている。家も引っ越しが度重なるほどにどんどん小さくみすぼらしくなってゆく。そうしてみると、はた目にはこの家族は⇒2020/10/17
馨
994
産まれた時から未熟児で病弱だった主人公ちひろの為、謎の水をきっかけに宗教にハマった両親と、ちひろが出会う周囲の人の反応や友達の距離感等、最初読んだ時どう解釈して良いものか、読みやすくて短めでわかりやすいストーリーなのに何と感想書けば良いかわからない難しい作品だと思いました。ちひろの両親はただ娘の体の為に一所懸命、娘のことを大切に思っているという点では良い両親であるし家族愛としてこういう形はありではないか?周囲がどうあれ家族には家族しかわからない謎な習慣ってどこの家にも少しはあるのではないかと思いました。2017/08/06
ウッディ
926
娘の原因不明の湿疹に効果のあった水をきっかけに、新興宗教にはまっていく両親。親戚と絶縁し、貧しくなっていく家庭、父と母の奇行。かなり悲惨な状況にも関わらず、主人公ちひろの強さ故か、鈍感さ故か、物語は淡々と進んでいく。素直に宗教の教えを信じ、幸せに暮らす両親というちひろの目線、理屈で説明できないことに盲目的に傾倒しているようにしか見えない姉の視線。親と同じ教えを信じ、仲良く暮らすことも幸せの一つの形なんだと思わせるラストシーンと自分の生き方に子供を巻き込むという親の責任について、考えさせられる読書でした。2018/08/28
zero1
918
信じる者は救われる?この世界観は「あひる」や「こちらあみ子」の今村にしか描けない!ちひろは体が弱かったが、「金星のめぐみ」という水で完治。両親は喜び宗教に嵌り姉は家を出る。読みやすいし笑えるが、闇を描いてもいいんじゃないかと感じた。主人公の視点が弱く、結果としてカタルシスが不足。「普通とは何」というテーマは「コンビニ人間」に通じるか。もし今村が「描かない表現」を狙っているとしたら天才。本屋大賞18年7位。芥川賞候補。80年生まれと若い作家で才能は私を含め多くの人が認めている。今後の活躍に期待したい。2019/06/06
抹茶モナカ
915
新興宗教にのめり込む両親に育てられた主人公ちひろの日々。平易な文章で、不穏な雰囲気を漂わせる今村夏子さんのいつもの感じ。歪んだ家族が流れ星を探して、夜空を3人で眺めるラスト・シーンは、歪んだ家族に何かが起こりそうな予感と、その歪みを赦す雰囲気に不思議な広がりを感じた。2017/07/01