出版社内容情報
戦後50年体制の一翼を担っていた日本社会党。その誕生から常に、構造改革派論争など抗争を内部にはらんでいた。新党問題を乗り越えられずに迎えた、その最後の瞬間を委員長として立ち会った元首相が見たものは。
内容説明
党内では、構造改革論争、新党問題…。首相在任中には、阪神・淡路大震災、戦後五〇年の総理談話、住専問題…。党内外、政権内外、国内外に問題山積、波乱の渦中にあった最後の社会党委員長、村山元首相がその当時を回顧する。なぜ、戦後五五年体制の一翼を担った社会党は衰退したのか。そこに見えるのは、当時の一断面だけではなく、まさに今現在の政治課題である。
目次
第1章 国会議員への道のり
第2章 派閥全盛時代の社会党
第3章 国会のひのき舞台で
第4章 非自民政権の挫折
第5章 混迷、そして崩壊へ―社会党新党問題
第6章 「村山談話」「阪神大震災」「米軍基地問題」
著者等紹介
薬師寺克行[ヤクシジカツユキ]
1955年生まれ。東洋大学社会学部教授。専門は現代政治論、政治過程論。東京大学文学部を卒業後、朝日新聞社に入社、主に政治部で国内政治や日本外交を担当。村山内閣当時は首相官邸クラブキャップ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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モリータ
8
◆原著2012年刊、文庫2018年刊。聞き手は元朝日新聞社記者で東洋大学教授、専門は現代政治論。◆市議・県議を経て社会党員となった村山富市(1923-)。左右の派閥抗争にはほとんど関わらず、社労・予算委員会、国対委員長と国会業務に専心してきた(という)。教条主義を排した現実的な政策観をもつ人物と自他共に認めているが、自社さ連立政権では、社会民主主義政党の伝統ないし独自性を一方に、保守政党との妥協や政策変更の柔軟性を一方に、新党問題で動揺する党を横目に、総理大臣を務めたことがよくわかる。◆以下引き写し。2021/05/13
nishiyan
8
まず苦学と戦争体験が政治家村山富市を作ったのだと思った。市議会議員、県議会議員、そして国会議員になるに至るまでは縁と多くの人の後押しがあり、自ら望んでなったものではなかったというのが意外だった。自社さ政権では足下の社会党議員が戸惑う中で、村山氏は社会党の首相でなくてはできない政策を行おうとし、阪神淡路大震災やオウム事件にあっては野中広努氏や亀井静香氏といった自民党からの閣僚と相談して対応する。なぜ社会党は村山氏を支えられなかったのだろうかなど、考えさせられることは多い。良書。2018/02/16
ああああ
7
青年期の物語はまるでライトノベルの主人公のようだった。クラスで3番目くらいという凡百の秀才 トミイチ、上京して工場で働きつつも同郷人のアシストもありなんと大学進学、戦時中は幹部候補生の軍国青年、戦後は議会制民主主義を大事に思うも、暴力を是とする共産主義は良しとせず、という感情移入しやすいキャラクターで、現在は実家暮らしのニートという状態で物語は始まる。漁協から中央政界へと異世界転生し、政治家ハーレム無双ルートかと思いきや、野党第一党のはずの社会党組織は大きな弱点を抱えていた…。2018/05/28
がんぞ
6
いまなお「社会党」の復活を夢見ている善人=生きる屍・権力亡者/首相として「予算編成」に忙殺され、党務「社会党分裂」阻止をできなかった/組合依存を脱した左翼結集の標語「リベラル」とは具体性のあるものだったか?自由は弱者を傷つけるものなのだが/震災被災者、米兵暴行被害者にセカンドレイプした/自民党との野合により、成立した政治改革4法案「小選挙区比例代表並立制」が区割りが決まらず周知期間未了である口実で従来方式選挙をして再度仕切り直しを狙っていたと見える。そのような口吻がある/基本的同方式選挙の特権的参院は不用2021/11/15
hirayama46
4
村山富市といえば、94年に自社さ連立政権によって社会党からの総理大臣になった人なので、党を代表する立場としてその歴史を語っています。いまの自公連立よりもスリリングな3党の連立ということで意義のあるものだったのだと思います。戦後の政治史はともすれば自民党史とニアリーイコールになりがちなので、別の視座での語りには知見がありますね。いまの社民党はすっかり力を失ってしまいましたが……。2024/02/08