内容説明
病気の歴史をたどることで世界史の転換点が明らかになる。古代ギリシアの疾病、ハンセン病、ペスト、梅毒、結核、ガン…。これらの病いはなぜ人類にとっての甚大なる災厄となったのか。そして文明と歴史にいかなる影響を与えたのか。豊富な挿話を通じて猖獗をきわめる疫病の恐ろしさ、新たな難病の出現を描き出し、人類にとっての病気の意味を考察する誉れ高い名著。
目次
序章
第1章 「戦史」の主役・疫病
第2章 神の白き手―ハンセン病
第3章 夜明け前―ペスト
第4章 ルネサンスのあだ花―梅毒
第5章 産業革命と結核
第6章 近代文明の谷間―ガン
第7章 コレラをめぐる政府と民衆
第8章 「富国強兵」の病歴
第9章 病気・明治百年
終章
著者等紹介
立川昭二[タツカワショウジ]
1927年生まれ。早稲田大学文学部卒業。北里大学名誉教授。医療文化史。『歴史紀行死の風景』で第二回サントリー学芸賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
gtn
20
カミュの「ペスト」を引きながら、いつか伝染病が文明の驕慢に仕返しをしないとも限らないと警告する著者。600年前の黒死病は文明崩壊に至らしめた。現在は医療技術の発達や過去の反省を踏まえた人命尊重の醸成により、幸い冷静に対応する術を身に着けているが、感染症の発生源が他国であることを強調してナショナリズムを煽ったり、自らマスクをせず強国を演出しようとする驕慢な為政者がいるのも事実。2020/07/11
キムチ27
15
本作は36年ぶりに手直して再刊行とあるものの、煌きは翳っておらず、よくぞ、その時代で、かくの如き分析を成していると感銘すら覚える。 白黒だが、挿入されている「遺跡発掘物に見る」当時の障害、疾病を現わす絵やトルソ写真も面白い。「人間が文明に傲慢になる時、文明自身それに相応しい仕返しをする事を忘れない」・・もって念ずべし! ひたすら、数字だけで「長寿」を求め続ける現代。「果たして文明の進歩は病気をどれだけなくしてきたであろうか?」重い言葉である。2013/06/11
とんかつラバー
14
執筆は1971年の書であるが、これほどコロナ禍の今に刺さる本があろうか。かつてペストやコレラが人類を追い詰めたが、近代では成人病やガンに苦しめられている。細菌やウイルス由来の病気とガンは違うが、古代も現代も人口の1/4は病気で死んでいる。この辺すごく興味深い。明治時代にコレラが大流行した時、やるべきはインフラの整備だったのに、責任を地方に押し付けて軍事費や皇室費に(国民はバタバタ死んでるのに鹿鳴館でパーリー三昧)なにも進歩してねーな!公害病も戦前戦後で全く進歩がない!!2023/01/13
Homo Rudolfensis
13
☆4.7 読んだのは岩波ではなくNHKブックスだったのですが…。ともあれ、とても面白かったです。歴史上の種々の疫病を取り上げ疾病の歴史的法則性の一端でも窺い知る事ができれば、という本です。本書の黒死病の章末、p.90からの引用ですが、「六〇〇年前のペスト菌がいつの日か姿をかえて、あるいはわれわれの文明の驕慢(ヒュブリス)におもわぬ仕返しをしないと誰れが断言できよう。」とあります。かなり昔の本ですが、今読めて良かったのかもしれません。2021/10/27
ta_chanko
13
ペリクレス時代にアテネを襲った疫病、ユスティニアヌスのペスト、中世から隔離と差別の対象となったハンセン病、14世紀のヨーロッパで猖獗を極めたペスト、大航海時代とと梅毒、アメリカ先住民を激減させた天然痘・麻疹、産業革命と結核、近代化とコレラ、汚染物質とガン、現代のインフルエンザ、そして新型コロナウイルス…。病気は文明の宿命。特にグローバル化が進んだ時代には、感染症の脅威は避けられない。病気を研究し、予防対策をして、社会の仕組みも変えていく。病気が文明をつくる。きっと今回も。2020/06/15