出版社内容情報
従来の体操観を覆す野口体操の理論は,著者自身のからだの動きの実感を手がかりに生み出された.本書は,そのしなやかな思索を示すとともに,身体的思考にもとづき繰り広げた独創的な人間論,運動・感覚・言葉論でもある.
内容説明
「からだの主体は脳ではなく、体液である」―こうしたからだの動きの実感を手がかりに生み出された野口体操の理論は、従来の体操観を大きく覆し、演劇・音楽・教育・哲学など多方面に影響を与え続けている。身体の可能性を拓く体操法を端的に語った本書は、身体的思考に基づく独創的な人間論、運動・感覚・言葉論でもある。
目次
第1章 体操による人間変革
第2章 原初生命体の発想
第3章 息と「生き」
第4章 原初生命体の動き
第5章 ことばと動き
第6章 いろいろな問題
著者等紹介
野口三千三[ノグチミチゾウ]
1914‐98年。群馬県生まれ。群馬師範学校・東京体育専門学校助教授を経て、東京芸術大学教授、のち名誉教授。野口体操教室を長年にわたり主宰
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たまきら
38
夫が体の研究の一環で「野口体操」を実践しています。「体は皮膚に包まれた液体である」を実感することの面白さは、からだについて無頓着だった私に新しいことを教えてくれました。内臓の感覚、という言葉も今はすんなり受け止められます。…「猫は液体」説が有名になるずっと前に、こういう本を書いてた人がいるんだもんなあ…。2023/12/09
nao1
6
音大の一般向け講座で野口体操を知り簡単なのに効果抜群なので驚きました(歌を歌う前にやる体操)。 原子生命体として人間を袋のようにとらえているのが新鮮だった。この本を読むのはとても大変です。身体の動きや、体感を言葉で過不足なく表すのは難しいのではないでしょうか?それを真摯に伝えようとなさっている野口先生の言葉はとても端正です。この本が難産だったとありますが、わかります。動きはEasyで脱力できます。脳でなく身体で考えるというのは芸術家の考え方だと思います。横尾忠則さんもそう言ってましたっけ。2022/12/28
太郎丸
6
ようやく読めた。どこまでも体感に基づいた語りなのが面白い。身体感覚に対し、どこまでもオープンかつ率直に生きていくことで、未知に出会う楽しみが生まれていくのだろうか。次に動く部分が休んでいないと、滑らかで抵抗のない動きはできない、というのはシステマの練習をしているとつくづくそう感じる。リラックスした動き、というのは脱力ではなく、持続可能なもの。自分も自分の身体を通し、新しい未知を常に探求していきたい。2020/10/23
shimashimaon
5
努力。自力本願。私が永らく信奉してきた概念。如何なる信念を抱くかにかかわらず、自分の身体はそれ自身、生きようとしている。自分という「自然の分身」はどうなっているのか。身体は皮膚という袋に包まれた体液が主体で骨も筋肉もそこに浮かんでいる。情報は自分の内側で感じることによって初めて情報となる。体操は自然の分身を理解しようとする無分別智につながる営みのようで、内側に生ずる差異を悉く捉え「分かる」ようになる作業でもある。絶対者は言葉では語り得ないけど、自分の身体は語る言葉を創造してでも語るべきものなんですね。2022/04/30
ヤス
4
「人の本質は脳ではなく、体液である」という考えには衝撃を受けた。確かに脳のないアメーバのような生物も、敵から逃げたり、食べ物に近づいたりという行動をとることから、細胞膜の内側を保ち続けたいという本能が体液にはあるのかもしれない。そしてその目的を遂げることを助けるハイスペックな道具(危険の予測、食物確保の効率化)として、脳は生まれたのかもしれない。脳が脳の存在を重要視しすぎることが、人間の現代の精神的なトラブルの原因で、精神医学の発展、ヒトの「自律的進化」(もう一つ上のステージへ行く)の鍵となる考えかも。2015/05/23