出版社内容情報
鮮魚と浅草海苔の海辺の街が,戦争の足音とともに鉄の匂う工場地帯に変貌する.そして敗戦,朝鮮戦争…3代にわたる街の変遷を愛惜をこめて描き,仕事と技術の意味を問う.小関さんは今年50年の旋盤工生活を終えた.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kanagon88
2
大森の工場がどんな風にこの戦後を過ごしてきたか,職人の視点で描写されている.この先,ものづくりはどうなっていくのだろうと思う.2012/09/02
にゃん吉
1
京浜工業地帯の街で、旋盤工である著者は、職人の矜持を裡に、熟練の技術と勘から数値制御された工作機へと向かう技術革新にも適応しながら、淡々と、強かに働き続けます。海苔養殖の竿が消え、町工場がひしめき合い、やがて都市化が進んでいく。街の変遷とともに著者の人生も移ろい、著者の人生から街の移ろいが透けて見える。両者はコインの表と裏のようです。この本で描かれる市井の職人の記録は、戦後の日本のありふれた一風景でありながら、我々の社会の来し方を描く大きな物語でもあるように思われました。
mustache
1
ものづくりの現場で、ものが巡り、切り屑のくず鉄や使えなくなった砥石まで巡って、再生されて戻ってくると一緒に人も巡るような循環型の社会をしっかり描いていて、とても感動した。今年一番の読書かもしれない。妻の入院中に細々とした時間をつなぎ合わせて読了した。この作者の作品をもっと読んでみたい。2018/03/30