出版社内容情報
八世竹本綱大夫(つなたゆう)は豊かな天分に加えて猛稽古を重ね,風(ふう)を重んじた格調ある理知的な語りを完成した.本書は彼と身近に接した著者による本格的評伝.昭和四十年代までの文楽界と大阪に生きる芸人の姿を敬愛の念をこめて描いた力作.
内容説明
昭和を代表する文楽太夫、八世竹本綱大夫(一九〇四‐六九)。彼は明治末に豊竹古靭大夫(後の山城少掾)に入門し猛稽古を重ね、「風」を重んじた理知的な語りを完成した。五五年人間国宝、六九年芸術院会員。本書は綱大夫と身近に接した著者による本格的な評伝。明治から昭和四十年代までの文楽界と大阪に生きる芸人の姿を敬愛の念をこめて描いた力作。
目次
大序 綱大夫とその時代(或る別れ;豆太夫誕生;修業と結婚と;兄弟;新義座事件;召集令状;戦災;文楽分裂;日向嶋上演;山城引退劇;櫓下消滅)
景事 綱大夫聞書(春―放送と綱さん;夏―文楽楽屋ばなし;秋(竹中砦のこと;咲大夫襲名)
冬―寺子屋芸談)
道行 晩年の綱大夫(順天堂にて;父から子へ;軽井沢での生活;浅草の一夜;風花;正月;誕生日の死)
著者等紹介
山川静夫[ヤマカワシズオ]
1933年静岡市に生まれる。56年国学院大学文学部卒業、NHKにアナウンサーとして入局。「紅白歌合戦」「ウルトラアイ」などの司会を務める。94年よりフリー。著書は『名手名言』(日本エッセイストクラブ賞受賞、文春文庫)など多数
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感想・レビュー
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hazama
1
綱大夫と師の古靱大夫(山城少掾)の関係に胸を打たれる。そして山川静夫の落ち着いた文章が嬉しい。感想として言いたいこととはズレたが、そこは本気で感じている。2014/02/16
wasabi
1
人形浄瑠璃文楽という華やかな舞台に大いに惹かれた。大夫、三味線、人形が三位一体となり演じる世界は、触れにくい現代となってはエキゾチックでもある。盛衰を繰り返しながら不安定な状態で現在に継がれていることは、他の伝統芸能と変わらないようだ。2007/08/23
GO-FEET
1
★★★☆ やっぱり芸人譚や芸談はオモロイです。2009/06/20
みつひめ
0
現・咲大夫さんのお父さんである先代綱大夫について、著者が実際に付き合って感じた人となりを、さまざまなエピソードでつづった一冊。素直な人だったんだろうな、きっと。うまく立ち回ろうとか、そういうことができない人だったから、かえって、その行動の真意が理解されなかったのだろう。それゆえに、綱大夫は櫓下に座れず、そのまま現在に至るまで櫓下不在という状況が続いてしまっているのか…。もう櫓下が復活することはないのかしら?2014/11/20
qbmnk
0
面白く読めた。現豊竹咲太夫さんの父である八代目竹本綱大夫さんについて、元NHKアナウンサーの山川静夫さんが本人との交流エピソードを交えて幼少時代から亡くなるまで生き生きとした文章で描いている伝記。昔の芸人らしいエピソード、芸の道の厳しさ、師弟関係、文楽分裂で揺れ動く気持ちや歌舞伎との共演など、次から次へと興味深い話が展開されていく。現在の文楽を観ることはできるが、過去の積み重ねに少しでも触れるとますます興味が湧く。山川静夫さんの古典芸能への愛の深さも伝わってくる。いい観客になりたいと思った。2018/03/30