出版社内容情報
究極のパロディか,抱腹絶倒のメタフィクションか! 印象批評からポスト構造主義まで壮観な文学理論を展開する唯野先生が「大学」と「文学」という2つの制度=権力と渡り合った,爆笑と驚愕のスーパー話題騒然小説.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
absinthe
207
大学教授が主人公のコメディー風の小説。文芸批評の歴史についてかなり詳しく講義され、膨大な薀蓄に驚かされる。本書の半分はきちんとした講義なので、ついていくのも大変だが損は絶対しない。absinthは理系で文学は門外漢だが、記号論はコンピュータと関連があり興味深く読めた。あらゆる時代の文芸批評が網羅されそれだけでも読む価値あり。筒井さんは本書のために相当の勉強をされたと思う。筒井嫌いで有名なある先輩も、この本だけは褒めていた。
ケイ
161
この作家は、二年前の新潮文庫の100冊に入っていた「旅のラゴス」を除いては読んだことがなかった。この本も友人にプレゼントされて手に取った。唯野教授の日常や会話に絡めて、大学のあり方、文学部のあり方、研究より出世の研究者を批判する。さらに文学批評も舌鋒鋭くしているのだが、それをするための筆者の知識量に感服した。2017/04/27
優希
106
面白かったです。大学と文学をテーマにしたメタフィクション。グロテスクな大学での日常を乗り切りながら、現代文学理論の難解な講義でぶった切るスラップスティックさは筒井ワールドそのものでした。しかし、ただのメタ小説におさめず、文学理論の講義解説もきっちりしているので学術小説としても楽しむことができました。下手な文学理論の本を読むより分かりやすいと思います。大学教授会の暗部の暴露本でもありますが、意外と真面目な印象もある作品でした。2015/10/29
中玉ケビン砂糖
92
、もちろん筒井康隆流のブラックユーモアでふんだんに盛られているけれど、「大学というシステムのブラックな裏側」「人文科学・文学の入門知識」「小説の面白さ」を享受できるへんてこでお得な一冊、でも実際問題、教授職の争奪戦とか教授会の権力とか、某国立大学教養学部の内部腐敗とか、そういうドロドロした感じは学生目線でもひしひしと感じるものだ、一昔前は余程の重鎮でもないかぎり2015/05/17
harass
72
数年ぶりの再読。架空の大学の文学部教授が主人公で、大学教員たちの強烈なデフォルメされた学内権力闘争のドタバタ劇と、主人公による文芸批評の実に真面目な講義録。80年台の実在の大学や関係者や作家評論家を当てこすった偽名やエピソードが散りばめられている。 筒井作品は久しぶりで、この軽口と饒舌さと独特のフレーズに久しぶりに読んでいて噴き出してしまった。関西人特有のギャグセンス、天丼の使い方など、はさすが。 こんな作品があれだけ売れたの不思議だが受け入れた日本の文化もまだまだ捨てたものではないと感じた作品だ。2017/01/13