出版社内容情報
大澤自由論が最もクリアに提示される主著が文庫に。「自由の牢獄」「責任論」「〈公共性〉の条件」の三章と、ドストエススキーも援用しながら〈自由〉の新しい概念を提起する章とで構成。河合隼雄学芸賞受賞作。
内容説明
個人の自由こそが最大の価値であるリベラルな社会においても、実際はさまざまな意味でそれが空虚なものとなっている。そんな「自由という名の牢獄」から、私たちはどうやって抜け出すことができるのか。本書は、責任・公共性・資本主義との関係から、自由という概念そのものを鍛え直し、変形し、その限界を克服するための探究である。河合隼雄学芸賞受賞作。
目次
第1章 自由の牢獄―リベラリズムを超えて(リベラリズムの時代;自由の困難 ほか)
第2章 責任論―自由な社会の倫理的根拠として(責任の不発化;リスク社会 ほか)
第3章 “公共性”の条件―自由と開放をいかにして両立させるのか(幽霊という敵;現れの空間 ほか)
第4章 不・自由を記述する赤インク(不・自由を伝える赤インクがない;資本主義における格差問題 ほか)
著者等紹介
大澤真幸[オオサワマサチ]
1958年生まれ。社会学者。東京大学大学院社会学研究科博士課程修了。社会学博士。千葉大学文学部助教授、京都大学大学院人間・環境学研究科教授を歴任。著書に、『ナショナリズムの由来』(毎日出版文化賞)他、多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆう。
20
自由とは何かはとてもむずかい問題。資本の儲けの自由だけを求めると、市民や労働者の自由は守られない。なんでも自由というのは実は自由ではない。人々が獲得してきた権利や人権を土台にして自由を考える必要があると思った。個人的には著者の論理構成はなかなか難しく疑問に思うところもあったが。2020/08/03
またの名
16
多様なニーズに合わせ無数の選択肢をご提示されても面倒臭く感じる閉塞した自由を旗印にする社会で、自由が拘束を生む地獄から不自由こそが自由を実現できる逆説への道を探る。他にも民主的討論では「ただし議論のテーブルに着けないキ◯ガイは除く」剰余の排除が働いてたり、寄付活動に報酬を与えたら成果が落ちた反市場経済的な実験等のこの社会の矛盾点を、縦横無尽に記述。早くも中動態に注目した先見性も持ちつつ、米軍基地への反感を結集したレイプの重視は今や微妙。リベラル批判を駆動する感情はその特権視に対する反発として現れてるから。2019/06/05
kuppy
3
冒頭の挿話であるように、閉じ込められた棟のどの窓からも出られる(自由な)状態では外に出られなかったのに、出ることを意識しなくなった時に自然と抜け出ている。それは多くの商品の中から選んだ時よりも限られた陳列の中から選ばざるを得ない方が満足度が高いなども同様、自由と表裏一体の不自由さ(牢獄)がある。阪神大震災時にたまたま10分早く起きたことで助かった女性と下敷きになった夫、罪の意識ではなく私が死んでいたかもしれないことで自己が不安定になり意識が浮遊してしまう、ホモサケルの下りが印象的だった。2022/02/15
コミジ
1
題名ほど中身は暗くない印象。例えば「分断」が現代の課題のひとつであり、これを克服するための「第三者の審級」を探る本と読みました。2023/07/21
ほうれん草
1
前書きがとても興味をそそるが、一章が難解で僕の読解力ではなんとなくしか理解出来なかった。 2章からはどうにか。2019/06/16