内容説明
長き論争を超えて、歴史への新たな対話はいかにして可能になるか。その主題は東アジア諸国間で我々自身が直面する課題であり、世界の至るところでさまざまな問題が噴出している同時代の課題である。本書は、過去のイメージを多様な角度から再生産する小説・写真・映画・インターネットなど数多くのメディアが提示する歴史像を解読し、求められていることは「歴史への真摯さ」であることを読者に示唆する。歴史問題を考察する人にとって必携の書。
目次
第1章 過去は死んでいない
第2章 想像しがたい過去―歴史小説の地平
第3章 レンズに映る影―写真という記憶
第4章 活動写真―歴史を映画化する
第5章 視角―漫画の見る歴史
第6章 ランダム・アクセス・メモリー―マルチメディア時代の歴史
第7章 “歴史への真摯さ”の政治経済学に向かって
著者等紹介
モーリス‐スズキ,テッサ[モーリススズキ,テッサ] [Morris‐Suzuki,Tessa]
1951年イギリス生まれ。バース大学で博士号取得。現在、オーストラリア国立大学教授(太平洋アジア研究学院)
田代泰子[タシロヤスコ]
翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
踊る猫
30
映画・漫画・写真など、幅広いジャンルの表現を軸に「歴史とは何か」について考察を重ねた書物。小林よしのりや藤岡信勝といった日本の歴史修正主義者/リヴィジョニストの言説にも触れて、彼らのアラを、しかし無闇に攻撃的になり過ぎることもなく穏やかに批判している。この穏やかさ、冷静さが買いと見た。裏返せば人を呼ぶキャッチーな議論ではないが、プロの仕事と思ったのだ。ポストモダン的な「歴史は単一のものではなく、語り手の視座の数だけ存在する」という(相対主義的な?)価値観は広く共有されている。そのジレンマを突く侮れない好著2019/10/22
ネムル
16
過去を相対主義の渦に投じる歴史修正主義、情報過多による歴史への判断停止、この二つのシニシズムを克服する試み。それはまた、心情的な歴史との一体化と理性的な歴史解釈とを、統合する試みでもある。歴史の教科書よりも強い影響力のある歴史小説、写真、映画、漫画などのメディアの特性を把握することで、プロセスとして「歴史への真摯さ」を著者は喚起する。例えば、写真や映画の配列・編集によって観る心情が誘導される(歴史との一体化)とは重要な指摘だ。2019/10/19
かんがく
9
博物館、小説、漫画、映画、インターネットなどが歴史をどのように伝えてきたのか。なかなか硬質な文章ではあるが、提示される問題はどれも興味深い。2022/09/03
Hiroki Nishizumi
4
ちょっと類書との違いがよく分からなかった2020/03/17
読書熊
2
過去は過去にすらなっていない2022/12/16