内容説明
社会秩序の要としての天皇制を歴史的に把握する時、明治維新をはさむ約一世紀の間に、天皇制をめぐる観念の大部分が作り出されたことは明らかである。その生成と展開の過程から何が明らかになるか。膨大な史料を読み込み、思想史の手法で天皇制の本質と受容基盤を解明する渾身の一冊。新稿「天皇制とジェンダー・バイアス」を付す。
目次
第1章 課題と方法
第2章 近世社会と朝廷・天皇
第3章 民俗と秩序との対抗
第4章 危機意識の構造
第5章 政治カリスマとしての天皇
第6章 権威と文明のシンボル
第7章 近代天皇像への対抗
第8章 近代天皇制の受容基盤
第9章 コメントと展望
著者等紹介
安丸良夫[ヤスマルヨシオ]
1934年富山県に生まれる。京都大学大学院国史学専攻博士課程修了。一橋大学名誉教授。日本思想史専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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かんがく
7
昭和天皇崩御の際に書かれた。対外危機に直面した19世紀の日本で、絶対的権威としての近代天皇像がどのように形成されていったのかが、国学や神道、民衆信仰、明治政府の政策などの多彩な史料を用いて記述されている。なかなか難しかったが、西洋の学説なども天皇制に当てはめていて面白かった。2017/07/06
うえ
2
前提として、「歴史的実態」なるものが存在する。天皇制という言葉はマルクス主義者以外の人々にも広く用いられるようになった。野坂参三に「重要な理論的貢献を認めるとしても」「一般的な現象の指摘にとどまっていた」から日本マルクス主義の天皇制認識には重大な欠陥があった。バーガー=ルックマンに依拠しつつ彼らが強調していない(?)社会的危機の時代に象徴的全体性は、観念的統合性を作り出すと主張。2013/08/07