出版社内容情報
中国革命の源流をなす太平天国運動．本書は指導者・洪秀全の革命思想の成り立ちを明らかにし，南京入城以後の軍事共産主義的な社会制度や諸王間の抗争の実態を描く．半世紀にわたり太平天国を研究してきた第一人者による伝記．
内容説明
中国革命の源流をなす太平天国運動。指導者・洪秀全はキリスト教を独自に解釈して拝上帝教を創始し、民衆をひきつけて十四年にわたり清朝と対峙した。彼は「世直し」運動の指導者として孫文や毛沢東に大きな影響を与えた。本書は宗教運動から反清革命への転換の経緯やその後の運動の展開を明らかにし、南京入城以後の軍事共産主義的な社会制度や諸王間の抗争の実態を描く。半世紀にわたり太平天国を研究してきた第一人者による伝記。
目次
１ 神はただ一つ
２ 宗教運動から「革命」運動へ
３ 地上に天国を
４ 地上天国の現実
５ 天兵を得て天京を守る
著者等紹介
小島晋治［コジマシンジ］
１９２８年茨城県に生まれる。１９５２年東京大学文学部東洋史学科卒業。東京大学名誉教授。中国近代史専攻
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感想・レビュー
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崩紫サロメ
21
太平天国の包括的な入門書といえる。かつて太平天国は中国共産党の先駆となる農民革命と捉えられており、洪秀全は毛沢東と重ねて礼賛されたが、鄧小平時代に入り、それが修正されつつある、本書はそのような時期に書かれたもので、二つの時代を重ねて読むことができる。天朝田畝制度は余剰を社会や経済の発展に用いるという発想がなかった点で、伝統的な儒教の流れを汲むものであり、大躍進時代の共産党も同じ過ちを繰り返した。洪仁玕の案は資本主義を先取りするものであり、改革開放に通じるものがあった、など。2021/09/30
パトラッシュ
16
太平天国の乱は失敗したせいもあり興味は薄かったが、専制王朝打倒を唱えて14年間も反乱を続けた事実を改めて知って驚いた。大反乱を引き起こしながら南京入城後は酒色に溺れた指導者洪秀全は英雄とは程遠い愚者でしかないが、ユートピアを目指した世直し思想ともいうべき彼の理想が孫文や毛沢東にも影響を与えていたとは。その歴史をコンパクトに過不足なくまとめた本だが、幕末日本に与えた影響なども含めてもう少し詳細を書き込んでほしかった。太平天国など多くの宗教反乱の前例が怖れて、中国政府は法輪功運動をあれほど激しく弾圧したのか。2020/05/22
isao_key
11
1840年イギリスがアヘン戦争で清に勝利して以降、列強諸国が中国進出を強める中、太平天国の乱が起こる。「中国では一つの王朝の末期に、しばしば大規模な民衆反乱が起こり、明の朱元璋のようにその中から、新しい王朝を創立した者もいた。現代中国では一般にこれらを旧式の農民戦争と呼び、太平天国運動をその最も高度に発展したものとみなしている」報道によれば現在の中国のジニ係数は公式発表で0.46実際には0.73といわれ、いつ大暴動が起きてもおかしくない。共産党が恐れるのは洪秀全のような民衆から生まれた宗教指導者だろう。2017/07/28
遊未
9
キリスト教というにはあまりに遠く、王朝交代と蜂起というには目標を目指す信念もなく、指導者のカリスマ性は宗教色を纏っても弱く…と感じます。洪秀全が能力のある人材を完全にコントロールできず内紛から人材を失い、どんどん人材不足に陥っていきます。そして、権力志向の争いに…。繰り返される典型的パターンの一つでしょう。2018/10/13
maqiso
4
洪秀全はキリスト教を元に拝上帝教を作り、清末期の疲弊した下層階級に指示されて太平天国を興したが、現実的な政策を打ち出せず内部分裂を招いて一代で消滅した。信徒数の増減も南京に入るまでの移動も天京での興亡も、どれも非常に早く進んでいるのが面白い。読み物として楽しめる。2019/07/09
