出版社内容情報
「滅満興漢」を掲げて清朝打倒をめざし、皇帝制度を否定した太平天国。その鎮圧のために組織され、台頭する地方勢力の筆頭となった曽国藩の湘軍。血塗られた歴史をもたらした両者の戦いの詳細を丹念にたどり、中国近代化へと続く道に光をあてるとともに、皇帝支配という権威主義的統治のあり方を問い直す。
内容説明
「滅満興漢」を掲げて清朝打倒をめざし、皇帝制度を否定した太平天国。その鎮圧のために組織され、台頭する地方勢力の筆頭となった曽国藩の湘軍。血塗られた歴史をもたらした両者の戦いの詳細を丹念にたどり、中国の近代化をめぐる道程に光をあてるとともに、皇帝支配という権威主義的統治のあり方を問い直す。
目次
1 神は上帝ただ一つ
2 約束の地に向かって
3 「地上の天国」の実像
4 曽国藩と湘軍の登場
5 天京事変への道
6 「救世主の王国」の滅亡
結論
著者等紹介
菊池秀明[キクチヒデアキ]
1961年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業、東京大学大学院人文社会研究科博士課程修了。博士(文学)。中国広西師範大学、広西社会科学院に留学および在学研究。その後、中部大学国際関係学部国際文化学科講師、助教授、国際基督教大学准教授などを経て、国際基督教大学教授。専攻は中国近代史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ばたやん@かみがた
122
当初は厳正な軍紀で民衆の評判も上々だったのが、やがて劣化してゆき苛斂誅求が当たり前になる。お互い猜疑心に囚われた上層部が内ゲバを始め反対党派を殺し合う。家族を否定し男女に別れた監視体制の下で共同生活を強制する…。20世紀のポルポトか文化大革命かと思わせる記述ですが、さにあらず。全て19世紀中葉、当時の江蘇省だけでも2千万人の死者を出したと言われる太平天国の記述です。キリスト教に触発され窮民の為に地上での天国を目指した宗教・政治運動が何故この様な惨状をもたらしたかを時代を追って語っていきます。(1/5)2021/05/03
パトラッシュ
81
太平天国の乱の通史をまとめただけでなく、この宗教的農民反乱が現代中国政治にまで深い影響を及ぼしている事実を明らかにする点で今日的な意味を持つ。広大かつ多様な民族と社会を統一王朝下で統治する難しさと民衆暴力の恐怖を中国人の骨身に叩き込み、国民党も共産党も独裁皇帝制の変種である政党と国家が一体化した「党国体制」を採用する遠因となったのだから。もし太平天国が存続していたら、現在の大陸は欧州のような複数国家が並存していたかもしれないのだ。中国の動向が世界に与える影響を思えば、あり得たかもしれぬ歴史を考えてしまう。2021/02/12
skunk_c
65
太平天国の顛末について、その思想的な成り立ちから清との対峙、そして内紛と滅亡という展開を詳細に描く。清末期でその統治力(特に軍事力)が極めて低下しているとき、さらに同時進行でヨーロッパとも戦争をしているときに、相当な地域を押さえながら、結局清朝を打倒できなかった理由は、やはり民心を捉えきれなかったことか。男女を厳しく分けて生活させながら、洪秀全など「諸王」は多数の女性を侍らせていたという矛盾(既視感あり)や、結局人々の生活を支える生産に目が向いていなかったことが、自滅に至る原因だったように思えた。2021/02/19
kokada_jnet
63
太平天国が天下を取る歴史改変SFを、中国のSF作家の誰かに書いてもらうのを希望。(翻訳されていないだけで、そんな安易な作品は、すでにあるのかな)2021/06/14
だまし売りNo
52
太平天国は清朝の支配とは対照的であった。中国に新たな政治の仕組みを生み出す可能性があった。第一に阿片の厳禁である。太平天国は阿片の吸引を厳しく禁止した。洪秀全は阿片吸引を「変じて妖を生む」ことを批判した。清朝は司令官レベルにも阿片中毒者がいた。阿片中毒者が虚偽告発で冤罪を作っていた。2023/12/02