出版社内容情報
米外交は経済制裁、特にドル覇権を背景とする金融制裁を抜きには語れない。しかも北朝鮮やイランなどの敵対国やテロ集団にとどまらず、根拠法の「国外適用」により第三国の企業や個人も制裁の対象になり得る。なぜ経済制裁は多用されるのか。それは世界に、そして自国に何をもたらすのか。「米国第一主義」の内実を抉る渾身の一冊。
内容説明
米外交は経済制裁、特にドル覇権を背景とする金融制裁を抜きには語れない。しかもイランや北朝鮮等の敵対国やテロ集団にとどまらず、根拠法の「国外適用」により第三国の企業や個人も制裁対象になる。なぜ経済制裁は多用されるのか。それは世界に、そして自国に何をもたらすのか。超大国の内実に新しい光を当てる渾身の一冊。
目次
第1部 司直の長い腕(孟晩舟はなぜ逮捕されたのか;経済制裁とその歴史 ほか)
第2部 アメリカ制裁の最前線(米制裁を変えた9・11―テロ;マカオ発の激震―北朝鮮 ほか)
第3部 制裁の闇(巨額の罰金はどこへ;冤罪の恐怖 ほか)
第4部 金融制裁乱用のトランプ政権(制裁に効果はあるのか;基軸通貨ドルの行方)
著者等紹介
杉田弘毅[スギタヒロキ]
1957年生まれ。国際ジャーナリスト。一橋大学卒業後、共同通信入社。テヘラン支局長、ニューヨーク特派員、ワシントン特派員、同支局長、編集委員室長、論説委員長をへて、現在、共同通信特別編集委員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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skunk_c
55
現代のアメリカの制裁外交が、国際決済に用いられる基軸通貨がドルであることを利用し、国内企業(特に金融機関)を縛り、外国企業へ排除の脅しをかけて、国外の企業に影響を与える仕組みがよく分かった。同時に、トランプ政権の行き当たりばったりの目先の駆け引き(ディール)にとらわれ、長期的なヴィジョンのない制裁が、かえってアメリカの制裁力、ひいては基軸通貨ドルの力を落とすという指摘には納得。出口のない制裁は、それに従うより他の手段(国際金融なら決済手段)を生み出し、それが結果的にドルの影響力を引き下げるというのだ。2021/01/31
moto
25
昨今のウクライナ危機で、制裁について取り上げられる機会が多いため、手に取った。近年のアメリカ外交における制裁について、分かりやすく解説してある。特に、基軸通貨ドルの強さを活かした金融制裁の威力が詳しく書いてある。事例を交えて解説しているので、ニュースと関連付けながら理解できる。ポスト冷戦期のアメリカ外交の復習にもなると思えるくらい、アメリカ外交における制裁が占めるウェイトが大きいのだと感じた(第二部)。(1/2)2022/02/14
coolflat
19
今の米国の経済制裁の中心は、貿易禁輸(モノの遮断)ではなく、敵対する国や組織を締め上げるために基軸通貨ドルと世界経済の動脈である米国の金融システムをフルに使う金融制裁にある。なぜならモノの遮断はいくらでも抜け穴を見つけられ効果が薄く、モノはどこでも生産でき、貿易できるからだ。だがドルを使わせない金融制裁は、米国が独占的にドルの使用に睨みを利かせているから、抜け穴封じができる。その分効果が上がる。しかも米国の金融制裁に違反して、ならず者国家・組織に金融サービスを提供した銀行には超巨額の制裁金を支払わせる。2021/01/17
紙狸
12
2020年2月刊行。著者は共同通信テヘラン特派員、ワシントン支局長を務めたベテランジャーナリスト。ドルは世界の基軸通貨だ。世界における米国の影響力を支えている柱の一つは、国際金融システムを支配していることだ。この本はこのアメリカ特有のパワーを、「経済制裁」という視角から解明している。ドルの基軸通貨としての地位を、頻繁に金融制裁に利用することは、ドルの覇権の弱体化を早めるのではないか、という問題提起をする。個人的に関心のある対北朝鮮制裁の部分を精読した。北朝鮮の核問題の解決の決め手にはならなかった。2020/08/17
nagoyan
11
優。現代アメリカの経済制裁は、かつての貿易制裁(戦略物資の禁輸等)ではなく、国際金融市場からの追放という金融制裁である。アメリカがこの制裁手法を濫用するにいたった歴史と、金融制裁の実態を鋭く描く。米国内法で国外効果のある、というか、それをねらった制裁手法の合法性を問いつつ、基軸通貨国の特権的な地位を利用した一方的な制裁に対して、ドル離れが進む危険も視野に入れる。それにしても、巨額罰金が利権化している様を描いた第7章、冤罪を介さない様を描いた第8章には驚愕した。2020/04/30