出版社内容情報
デジタル技術の発展に,従来の「法」の前提がゆらいでいる.何が起きているのか.どう考えたらよいか.
内容説明
AIの利用が普及し、データの価値が増大する時代には「モノからサービスへ」、「財物からデータへ」、そして「法/契約からコードへ」という変化が生じる。それは法の世界に大きな変革をもたらし、さらに法の考え方の基盤を揺るがすようなインパクトを持つだろう。AIの時代に生じる諸問題を考え、対処する道筋を描き出す。
目次
第1章 デジタル技術に揺らぐ法
第2章 AIとシェアリング・エコノミー―利用者と消費者の間
第3章 情報法の時代―「新時代の石油」をめぐって
第4章 法と契約と技術―何が個人を守るのか
第5章 国家権力対プラットフォーム
第6章 法の前提と限界
著者等紹介
小塚荘一郎[コズカソウイチロウ]
学習院大学教授。博士(法学)。1992年東京大学法学部卒業。千葉大学法経学部助教授、上智大学法科大学院教授などを経て現職。総務省AIネットワーク社会推進会議構成員、経済産業省消費経済審議会委員、経済産業省産業構造審議会臨時委員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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buchipanda3
111
社会のデジタル化に伴って権利や責任の主体をどう捉えていくべきかというのをこれまでの法や原則の概念を通じて考察している内容だった。近年のモノからサービスやデータへと移行するデジタル経済のスキーム、さらにはCASE、MaaS、情報銀行などの動向にも言及している。自動運転の事故責任は欠陥の定義や更新の仕組みなどから単純ではなさそう。コードが法に代わるという現象からプラットフォーマーの担う責任が大きくなる傾向があるが、仕様は人間次第であり、学習データのバイアスの有無で差別も生じる。課題は尽きないと思った。2021/02/03
けんとまん1007
48
タイトルにはAIの文字があるが、もっと広い分野をカバーしている。データが今の時代、何よりも重要性が高い。モノではなく、サービスが価値を持つ。それを支えるのがビッグデータであり、通信であり、分析し推論するAI。ただし、そこにはまだまだ人間が介在するし、方向性を決める。だからこそ、ルール、法が意味を持つ。2020/05/08
おさむ
41
デジタル社会になったいま、民法の売買契約を筆頭に、日本の法体系は早急な変革を迫られていると訴える警告書。所有という概念はシェアリングエコノミーによって変わりつつあるし、製造物責任の世界もベストエフォートが主流となっているIT機器やネットサービスにはすんなり当てはまらない。法律は社会の変化を半歩遅れで追いかけるものだが、いまは社会の変化が早過ぎるという事なんだろう。法よりもコードが重要になってくるこれからの高度技術社会において「法学部」なるものがなくなるかもしれないな、なんて思ったりもしました。2020/01/28
seki
25
自動運転の車が事故を起こしたら、責任者は車に乗っていた人か?それとも自動車メーカーか?そんなAI時代に絶対ありそうな法的な問題を考える書。技術の進化に目を奪われがちだが、そういった問題は避けられない。こうした議論はおそらくどこかで、なされているのだろうが、私自身はあまり耳にしない。身近な問題であるが故に、今後、国民的な議論が必要となってくるのではないだろうか。2020/04/26
501
21
情報技術と法という、自分にとって興味のある分野が組み合わさったとても旬な本。情報の収集と解析する量やスピードが飛躍的に上がり、かつ高度になり、社会のあり方さえ変えるほどの力を持っている。ビッグデータやAIというキーワードをはじめ、この現代の技術が社会に及ぼす性質を抑えつつ、法のあり方が説明され、従来の法の前提から異なるパラダイムに突入していることがわかる。再読したい。 2020/02/15