出版社内容情報
革命から100年。立憲主義・自由主義者らの奮闘と挫折を臨場感ある筆致で描き出し、革命の今日的意味を考える。
内容説明
史上初の社会主義国家誕生の契機となったロシア革命から一〇〇年。これまで革命の障害のように見なされてきた立憲主義者・自由主義者らの奮闘に光をあて、新たな社会を模索した人びとが当時に賭けていた思いや挫折を臨場感ある筆致で描き出す。あの時潰え、民衆の間に新たに生まれたものは何だったのか。歴史的意義を考える。
目次
第1章 一〇〇年前のロシア
第2章 二月革命―街頭が語り始めた
第3章 戦争と革命
第4章 連立政府の挑戦
第5章 連邦制の夢
第6章 ペトログラードの暑い夏
第7章 コルニーロフの陰謀?
第8章 ギロチンの予感
第9章 十月革命
著者等紹介
池田嘉郎[イケダヨシロウ]
1971年秋田県生まれ。1994年東京大学文学部西洋史学科卒業。2005年同大学大学院人文社会系研究科博士号取得。新潟国際情報大学講師、東京理科大学准教授を経て、東京大学大学院人文社会系研究科准教授。専攻、近現代ロシア史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
39
革命100年の出版当初に読んで挫折した以来の再チャレンジです。当時は「ボリシェヴィキ」という言葉に馴染めなかったのです。臆面もなく「多数派」(未だにこのセンスが気持ち悪い)と付けるところに適応主義的な自己意識を批判するメタ意識の不在をみて取ったからというのが今にして言語化できるようになった挫折の理由でした。それは「はじめに」で和田と石井のふたつの史観によって著者の既に指摘するところですが、ロシアって未だに(自己意識が無い)ゾンビみたいなのかなって思います。日本が敗者に過度に優しいだけなのかも知れませんが…2021/03/15
燃えつきた棒
36
第4章「連立政府の挑戦」の章扉にあった二月革命の際のペトログラード、ネフスキー大通りでのデモの写真を見て、突然、安部公房『砂の女』の一節を思い出した。 【地上に、風や流れがある以上、砂地の形成は、避けがたいものかもしれない。風が吹き、川が流れ、海が波うっているかぎり、砂はつぎつぎと土壌の中からうみだされ、まるで生き物のように、ところきらわず這ってまわるのだ。砂は決して休まない。静かに、しかし確実に、地表を犯し、亡ぼしていく‥‥‥ 2023/11/26
TS10
34
本書では、ロシアの二月革命から十月革命へと至る政治情勢を、臨時政府の動向に主眼を置き、描写する。同時代の西欧諸国よりもはるかに社会格差の激しかった20世紀初頭のロシアにあって、ナショナリズムから戦争継続を望む「公衆」と、講和と社会主義的政策を求める「民主勢力」との板挟みにあった臨時政府は、戦争をやめることも、大衆を弾圧して秩序を回復することもできず、崩壊していったのである。もしボリシェヴィキが蜂起を起こさずに憲法制定会議が開かれていたとして、階級間の巨大な利害の対立を調整することは可能だったのだろうか。2023/09/25
fseigojp
28
ボリシェビキが唯一党となっていく過程を敗者の視点から述べているのが面白かった2017/02/18
skunk_c
26
1917年の2月革命から10月革命の間に絞って詳述。第1次大戦という大きな外圧のなかで民衆の不満が極限に達し、帝政が崩壊するが、そのあとの社会構想についてコンセンサスがないままに、様々な思惑が組んずほぐれつしながら政治が動いていく様はまるでアミーバのよう。結局権力が正統化されなかったのは議会を欠いたからなのか。でもあの混沌の中では議会はほぼ機能しなかっただろう。最終的にボリシェビキが力づくで権力奪取するが、レーニンをあまり評価せず、トロツキーの働きが大きい。ソ連は共産主義と民族主義の「結婚」で確立した。2017/02/25