内容説明
ドイツの哲学者ヘーゲル(一七七〇‐一八三一)は、フランス革命とその後の激動の時代にどのように向き合い、過去の思想をいかに読み替えて、自らの哲学体系を作り上げていったのか。『精神現象学』『法哲学綱要』『歴史哲学講義』を中心とする体系の形成プロセスを歴史的文脈のなかで再構成し、今日に及ぶその思想の影響力について考える。
目次
第1章 フランス革命と若きヘーゲル(ルソー共和主義と神学批判;ドイツ啓蒙とカント哲学;ロマン主義の誕生)
第2章 帝国の崩壊と『精神現象学』(帝国再建への期待;啓蒙主義批判からロマン主義批判へ;古代政治像からの訣別)
第3章 新秩序ドイツと『法哲学綱要』(近代化改革とナショナリズムの誕生;学の体系の概略と抽象的法‐道徳性‐倫理;家族‐市民社会‐国家;理性概念の論争的使用)
第4章 プロイセン国家と『歴史哲学講義』(一八二二年度講義と精神の自由の自覚;一八三〇年度講義と精神の自由の実現)
第5章 ヘーゲルとその後の時代(ドイツ観念論の継承者たち;ヘーゲルと現代)
著者等紹介
権左武志[ゴンザタケシ]
1959年生まれ。東京大学法学部卒。北海道大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学。法学博士。現在、北海道大学大学院法学研究科教授。専攻は政治思想史・政治学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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壱萬弐仟縁
16
Enzyklopädieとは、ギリシア語で自由人が専門教育の前に身に付けるべき一般教養を意味(103頁)。ヘーゲルは自然法ではなく、哲学的法学を導入した(108頁)。彼が初めて、国家Gemeinwesenから市民社会bϋrgerliche Gesellshaftから分離したという(リーデル1969年、123頁)。彼の市民社会は、市場・法・福祉というシステムから構成される複合体から成る(124頁)。市民社会や国家で必要なのは、個人の選択意志という主体的自由を通じて実現すべき(125-6頁)。覚えておきたい。2014/02/21
masawo
11
クソ真面目かつ堅物感溢れる著者による、当時のヨーロッパ情勢とヘーゲル思想の関係性にフォーカスした新書らしからぬ密度の一冊。通読しただけで理解できる筈もなく、ヘーゲルが後世に与えた影響について言及した五章から読み始めるのも一つの手だと思う。2020/10/19
無識者
11
『あるべき世界を教えるには、哲学はやってくるのが遅すぎるむしろ現実が完成し終え、終わりを迎えたときに初めて、哲学は、「夕暮れ」に差し掛かった成熟した現実を知性の力、「ミネルヴァ」により把握できる、すなわち「ミネルヴァの梟は夕暮れが訪れると初めて飛び立つ」』これって後のプラグマティズムとかに影響与えているのかな?本の内容は哲学に親しんでいないため、苦戦した。いろいろ勉強した後に再読したい。2015/02/20
ブルーツ・リー
6
うううーむ…。つまりは、宗教と理性の二元論を終わらにかかった人物という事でいいのだろうか…? 哲学に関しては、あまり簡単に「分かった」とは言えないし、実際分かっていないと思うので、発言は慎重に行きたい所。 ただ、個人が思想することによって自由が訪れるのだ、という発想は、恐らく現在、21世紀でも有為。 二元論的対立や、思想による個人の自由、という観点は、まさに現代の世界に求められている事象だと思われるだけに、近年ヘーゲルの復権が叫ばれている意味が分かるような気がします。2019/08/08
呑芙庵
6
岩波の赤らしいライン。ヘーゲルの法哲学を焦点にヘーゲルの全体を射程にいれたいという読者にとっては最良のヘーゲル入門なのではないかと思う。しかしヘーゲルの態度を哲学史全体から位置づけるのを試みた部分では妥当かどうか微妙な物言いがありそれは紙幅の問題なのだろうけれどちょっと不安になるところがあった。2018/12/20