内容説明
燎原の火のごとく広がる新型インフルエンザ。その世界的大流行は我々に何を問いかけているのか。小説家の想像力と専門家の洞察力とが切り結ぶ対話篇。いま必要なのは、過度に恐れず、適切に恐れることだ。根源を見すえた議論が、パンデミックに立ち向かう勇気と、冷静に対処する視座を与えてくれる。
目次
救える命を救うために(数ではわからないこと;感染症と病原性;つばがりの視点)
第1章 恐れと対峙する(公衆衛生の道へ;SARSでの体験;適切に恐れる;見えてくる被害;怖さを伝える)
第2章 パンデミックという経験(感染拡大は止められない;プロアクティブの重要性;致死率の難しさ;感染拡大の起こり方)
第3章 パンデミックを乗り越える(全体像をつかむ;情報をいかに発信するか;ポジティブに評価する社会性;被害を最小限に抑える;絶望しないこと)
第4章 想像する力(他者への想像力;フィールドから見えること;未来への想像力;おわりに―パンデミックを見すえるまなざし)
著者等紹介
押谷仁[オシタニヒトシ]
1959年生まれ。東北大学医学系研究科教授(微生物学分野)。専門は、ウイルス感染症の疫学研究、感染症対策。厚生省新型インフルエンザ専門家会議委員
瀬名秀明[セナヒデアキ]
1968年生まれ。作家。東北大学薬学研究科博士課程修了。2009年まで、東北大学機械系特任教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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keroppi
67
2009年に発刊された新書だが、まるでコロナウィルスの今を読んでいるようだ。「過度に恐れず、しかし適切に恐れて、想像力を働かせて、冷静に対処し、危機を乗り切る」ことが大切だと説く。また、「日本は、トップにリーダーシップはなくても、末端にいる人たちが頑張って、自分たちで考えて何とか乗り切っていくと思うのです。」とも言っている。十年前にも、このようにパンデミックへの警鐘を出していたのになぁ。2020/09/09
ntahima
49
2009年4月にメキシコに始まり世界規模で大流行した新型インフルエンザを中心に、パンデミックとは何かを探る対談集。コンパクトで非常に読みやすい。当時ソウルにある小さな塾で日本語を教えていた。近くの英語スクールが休校になったとの噂を聞き、感染したらどうなるのだろうかとビクビクしながら授業を続けたものだ。外国ゆえ情報が余り入らず、今回この本を読んで初めて知ったことも多い。あれだけ大騒ぎしたのに今は皆がすっかり忘れてしまったようだが、これだけ地球が狭くなった昨今、パンデミックはまさに『今そこにある危機』である。2012/02/03
T2y@
42
電子書籍版の緊急配信を受けさっそく拝読。 10年前の新型インフル時における提言として書かれているが、現在のコロナ動向を読み解くガイドたる内容。瀬名氏の引き出し力がまた良い。 パンデミックとは、病原菌への対処だけでなく、他者への想像力を働かせる事。 個人主義蔓延る日本に、公衆衛生を優先させる難しさ。 コロナとの戦いが長引くに連れて試される場面は増える。 2020/03/28
みねね
41
新型コロナウィルスとも少し距離ができて、ようやくその像を捉えられる時期に来たかな、と思い勉強したくなった。まずは以前のパンデミックから。2009年といえば僕はまだ高校で竹刀を振り回していた頃だし、そういえばその頃は豚インフルエンザがどうこうと言われていて、僕はさして気にもしていなかったけれど、熱っぽい先輩と部活後に締め切った部室でDSをしていたら、しっかり罹患したことだけはうっすら覚えている。あの頃の僕はまだ世間という視点すらなかったな。コロナを経てきた今の生徒たちは、世の中をどう見ているのだろう。2023/10/01
フム
29
感染症が話題の毎日、あふれる情報をどのように受け止めたらいいか戸惑っている。そんな中でベースとなる知識としてとても勉強になった。新型肺炎が話題になり始めた頃から、押谷氏は東北大学のHPで何回かメッセージを出している。専門家としての意見が取り上げられる中で、批判も目にするが、根本的には押谷氏の専門とする公衆衛生学は、人間の集団として何がベストかを考えるものであって、同じ医学でも、医者の持つ経験やスキルとは全く別物だということは肝心なところだと思った。医者は1人1人に対していかに最善をつくすかを考えるが(続)2020/03/04