感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
色々甚平
11
旧ユーゴスラビアで起きた内戦、紛争での民族浄化を謳った大量虐殺などの戦犯について筆者が裁判官として関わった裁判ノートを元に書かれている。あまりに酷すぎて今後この民族関係が正常化することは不可能に近いのではないかと思うほどだった。この本ではセルビア人の戦犯容疑者のみを挙げられているが、イスラム人、クロアチア人も容疑者として挙げられている。タカ派民族主義政権らがプロパガンダで他民族をこき下ろす。冷戦では東西に良いように使い捨てられたり、列強国の政治に巻き込まれ、より問題の根が絡まっていく。2016/04/12
ふぁきべ
5
本書において一つ重要だと思うのは、政治的なリーダーによる扇動が民族間の憎悪を作り出したという点に強く焦点が当たっているということ。著者は旧ユーゴ戦犯法廷の元判事であり、当時のメモを基に本書を書いていることを勘案すると当然ではあるのだが、そういった政治的リーダーが担ったネガティブな役割というのは、歴史的背景や宗教・民族・言語的違い、民族間での経済格差といった要素とともにより強く認識されるべきものだと改めて感じた。2021/06/23
Takao
3
2005年10月20日発行(初版)。1990年代に起きた旧ユーゴ紛争。報道から断片的な知識はあったものの、「民族浄化」「旧ユーゴ戦犯法廷」等、私自身、十分理解していたとは思えない。柴宜弘『ユーゴスラヴィア現代史』を読んで授業で使ったことはあるが、本書は活用しないまま眠っていた。本書は、旧ユーゴ戦犯法廷(ICTY)の判事として裁判に関わった著者が、裁判の「証拠」「証言」などを用いて、ユーゴ内戦の過程で起こった戦争犯罪を綴っている。ICTYの意義と限界、国際刑事裁判所(ICC)の設立についても触れられている。2022/04/23
竹の子
2
ウクライナにおける数々の戦争犯罪を我々は裁くことができるだろうか、と考えながら読んだ。もっともっとユーゴについて知らねばならないと思った。2023/06/27
うえ
2
2005年刊。良書。重い本。宗教、民族、人種の絡まり具合が尋常ではない。旧ユーゴ内の軋轢はおそらく今も変わっていない。スルプスカ共和国についてかなり詳しい。スルプスカには未だ責任を問われず政界で活躍するものもいるようだ。虐殺の連鎖の前で法は立ち竦んでいるように思える。良書であるがゆえに吐き気がする。著者は元判事。2014/12/02