出版社内容情報
イスラーム世界の求心点メッカ,預言者廟の地メディナ.写真家は自らムスリムとなって,2つの聖地の素顔を撮った.みずみずしい映像とともに,石油に支えられた原理主義王国サウディアラビアの,矛盾をはらむ実像をも紹介する.
内容説明
百万人の巡礼がカアバ神殿を廻るイスラーム世界の求心点メッカ、預言者の廟墓の地メディナ。ともにムスリム以外の入域を厳しく拒む。写真家は自らムスリムとなって、二つの宗教都市の素顔を撮った。みずみずしい映像と撮影記録はまた、石油に支えられた原理主義王国サウディアラビアの、矛盾をはらむ実像をも活写する。
目次
第1章 発端
第2章 メディナ
第3章 ラマダーン
第4章 ライラトル・カドルの礼拝
第5章 メッカ今昔
第6章 ハッジ
第7章 サウド家のアラビア
著者等紹介
野町和嘉[ノマチカズヨシ]
1946年高知県生まれ。写真家。1965年、高知県立高知工業高校卒業。1968年、杵島隆氏に師事し、1971年よりフリーランス。以後アフリカ、中東、チベットなどの厳しい自然と人々を撮り続ける。1985年、土門拳賞;90年、芸術選奨文部大臣新人賞;93年、講談社出版文化賞;2002年大同生命地域研究特別賞ほかを受賞
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
304
メディナの撮影については、向こうから著者(野町和嘉氏)にオファーがあったのだが、さらにモスクの内部までを写すためにムスリム(イスラム教徒)に改宗したとのこと。もちろん、それ以前から度々アフリカや近東を取材してきて、その風土の中でのイスラムを体感してはいたのだろうが。ラマダンの体験の共有などは、ムスリムであってこそであったかもしれない。そこまでの覚悟で臨んだ撮影行だけあって、メディナやメッカの写真は壮麗を極め、また迫力にも富む。また、建築物としても破格の美しさである。2023/07/17
kaizen@名古屋de朝活読書会
77
イスラム文化の国に長い期間滞在したことがない。いまだに理解できていないムスリム。イスラム文化圏は、アジア南部とアフリカ北部を占めている。 本書では、メディナとメッカの風景と宗教施設を説明している。 全体を通して、イスラム文化の理解の手がかりは偶像崇拝が禁忌だということだと感じた。ユダヤ教、キリスト教との共通部分も感じた。 仏教との類似点もみつかりそうな気がした。 メディナ,ラマダン,ハッジなどムスリムを理解する鍵となる章がある。2012/07/13
りー
11
メッカの写真を撮るためにムスリムになった情熱が凄まじい。始めは写真を撮るためにムスリムになった部分もあったものの、次第にムスリムというものに心を打たれ、惹かれて行くのがわかる。しかしこの人の写真は迫力があって凄まじい。2013/07/15
おとん707
8
本来なら写真に収められるようなことはなかったであろうメッカ巡礼と聖遷の地メジナ巡礼のフォトドキュメント。著者の写真家としての実績に注目した或るサウジ人有力者の依頼で実現した。私も3年ほどサウジアラビアに居たので知っているが異教徒はメッカやメジナには入れない。著者は便宜上とはいえイスラムに改宗してまでこの依頼を受けた。そのせいか写真も文章も受け狙いや誇張はなく、仕事に取り組む誠実さが感じられる。特に200万人もの人々が一堂に会す途轍もない迫力や祈りの真剣な表情の一瞬を切り取った写真は瞼に強く残像となった。2021/06/27
ジュースの素
5
日本の野町氏に撮影依頼が来た。さぞ彼も驚いた事だろう。彼はメッカを撮る為にムスリムに改宗し、現地の警察立ち合いの元で撮影を完工。メッカ巡礼と言うがその規模たるや何もかもが想像を絶するものでこの本を読まねばその実態は解らない。世界中から200万人ものハッジ(巡礼)者たちが一堂に集合する。幾ら金持ちでも 巡礼ビザが降りなきゃ行けない。縫い目のない白布を2枚纏うのが正装。貧富や国の差別はアラーの前では一切なし。 サウジアラビアと言う国とイスラムの教えの偉大さと特殊性に唖然とする。2016/10/14