出版社内容情報
インドに生まれ,漢訳を経て我々の手に伝えられた大乗経典『法華経』が,古来多くの人々を惹きつけてきたのはなぜか.「誰もが仏になれる」という究極のメッセージを中心に,その歴史,構造,思想を解き明かす.
内容説明
霊鷲山に座して真理を説く釈尊、空中に浮かぶ宝塔、大地を割って現われる無数の菩薩たち。『法華経』の世界はあくまでも視覚的イメージに富む。インドに生まれ、漢訳を経て我々の手に伝えられたこの経典が、多くの人々を惹きつけてきたのはなぜか。「誰もが仏になれる」という究極のメッセージを中心に、その歴史、構造、思想を解き明かす。
目次
第1部 『法華経』とは何か(『法華経』は初期大乗経典である;『法華経』の構想の基盤と全体の構成;『法華経』のテキスト;日本における『法華経』)
第2部 『法華経』の中心思想(一仏乗の思想―だれでも仏になれる;久遠の釈尊の思想―永遠の生命;誓願の宗教―地涌の菩薩の思想;『法華経』の七つの譬喩)
著者等紹介
菅野博史[カンノヒロシ]
1952年福島県生まれ。1976年東京大学文学部卒業。現在、創価大学文学部教授、同国際仏教学高等研究所所長。専攻は仏教学、中国仏教思想史
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感想・レビュー
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kaizen@名古屋de朝活読書会
71
第四章「法華経」の7つの譬喩について初めて学びました。法華七喩といい、三車火宅、長者窮子、良医病子、山草二木、化城宝処、衣裏繋珠とのこと。天台宗、日蓮宗、曹洞宗、創価学会、立正佼成会、霊友会で重んじられているとのこと。漢訳は約7万字弱。南無は、サンスクリット語でnamo。帰依、帰命。鳩摩羅什の漢訳、妙法蓮華経の略が法華経。岩波新書一覧 http://bit.ly/12LkZWe2013/06/13
SOHSA
41
《購入本》葬儀、初詣、最近流行りの御朱印集めなど現代日本でも仏教との関わりは決して少なくない。しかし教義や宗派の違い、経の意味を私たちは知っているようで実は殆ど知らない。本書はそのような近くて遠い仏教を法華経を中心に易しく解説している。原始仏教から釈迦入滅後のの変遷、小乗と大乗の違い、日本に伝来し或いは興された宗派の主旨などはどれも物語としても思想としても興味深く面白い。全ての経は釈迦が語った形となっているが実際に釈迦自身が語ったものはほんの一握りに過ぎない。しかしインドから中国に伝わった(→)2019/08/02
モリータ
14
ファンタジックな内容に読んだときはどうなのこれ?と思ったが、この本で紹介されているような法華経の世界観と、方便・一乗と三乗・久遠実成といったキー概念をざっとでも知っておくことは大乗仏教各宗を勉強するうえで必至ですね。2018/02/13
壱萬参仟縁
12
平易な表現と深い宗教性(ⅰ頁)。宗教文学作品、法華経(ⅱ頁)。初期大乗経典(3頁)。聖徳太子『法華義疏』(94頁~)。これのタネ本が『法華義記』(95頁)。お盆とはいえ、葬式仏教という感は否めない。2013/08/14
かず
10
浄土三部経と般若心経は読んだので、今度は法華経を学習する。因みに我が家は浄土真宗。但し、私は浄土三部経に対して別の解釈をしている。それは、真宗は阿弥陀仏の絶対的救済を信ずる絶対他力信仰であるが、私は阿弥陀仏との同化による菩薩、仏への昇華を目的とするものと解釈していた。そういう意味で、法華経の地湧の菩薩、法華七喩に特段の興味を持って読んだ。本書p.181に「大乗経典の根本思想は救われるものから救うものへの転換を自覚し実践すること」とあり、思わず得心した。とても分かりやすく書かれており、非常に有意義でした。2014/11/29