出版社内容情報
若き天皇の恋愛騒動が語られる「睦仁天皇の恋」．学界へ孤独な闘いを挑む森銑三の「学歴のない学歴」．幸田文と森茉莉の娘時代を濃やかな人情で描く「マリとあや」など3つの物語を中心に映し出される明治人たちの肖像．
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
69
日本史の授業を担当するようになって以来の積読本の消化だったが、良い意味で期待を裏切られた。著者は自分の両親の世代の直木賞作家で、入院中に読み込んだ本をネタに書いた随筆集。星新一に触発された明治天皇、無学歴のの歴史家森銑三も面白いが、なんといっても白眉が本書の半分を占める「マリとあや」。森鴎外、幸田露伴というふたりの明治の文豪の娘(後者は幸田文)を、鮮やかに対比しつつ、その親、さらには永井荷風の人となりまで伝わってくる内容で、その軽妙で生き生きした描写に引き込まれた。明治～昭和初期の芳醇さを感じる。2022/10/31
Syo
24
読みかけだった本を読了。 最後は、森鴎外の娘と 幸田露伴の娘の話。 なかなか。2020/05/08
高橋 橘苑
20
3部構成で、｢睦仁天皇の恋｣｢学歴のない社会｣も筆者の渋い視点に、つい聞き耳を立ててしまうが、なんといっても白眉は｢マリとあや｣だろう。明治の文豪森鴎外の娘マリと幸田露伴の娘あや、一歳違いの二人の鮮やかな対比と筆者の枯れた文章に、静かに心打たれた。顕官を極め、文人としても名士だった父に、おんぶ日傘の形容では物足りない溺愛を受け｢ボンヤリの森さん｣として育ったマリと、幼年期父に疎まれ、外弁慶のオテンバ娘だったあや。時代に揉まれながらも、健気に、自由に、そして逞しく生きた二人の娘に、遥かに想いをはせてしまう。2015/03/03
カモノハシＺＯＯ
8
森さんのように勉強したいとは、思いますが、森さんのようにになりたいとは、今回は思いませんでしたです❗2023/12/28
まろにしも
8
★★★★ 森鴎外の娘・マリと幸田露伴の娘・文。おっとり型とチャキチャキ型と全く性格は異なるが、二人とも父親を尊敬し、父から多大な影響を受け、文章を書く才能まで引き継いだ。二人の女性の対比だけではなく、父親の教育の対比も興味深かった。森鴎外の親馬鹿ぶりに好感を感じ、一方、幸田露伴の娘への教育は非常に厳しいが、こちらも愛に溢れている。マリも文も結婚生活が破綻したのは、父親が偉大過ぎたからだろうか。2015/05/18
