出版社内容情報
尾に肢の生えたカエルをつくりだしたり,触角が肢に変わったハエをみつけてその原因を探り出すことから,生きものの設計図が解読されつつある.手足や頭といった,からだのパーツをレイアウトする遺伝子のはたらきがわかったのだ.発生生物学のヴィルトゥオーゾが研究の道程と成果をおもしろく語り,生きもの讃歌を唄い上げる.
内容説明
尾に肢の生えたカエルをつくりだしたり、触角が肢に変わったハエをみつけてその原因を探り出すことから、生きものの設計図が解読されつつある。手足や頭といった、からだのパーツをレイアウトする遺伝子のはたらきがわかったのだ。発生生物学のヴィルトゥオーゾが研究の道程と成果をおもしろく語り、生きものの讃歌を唄い上げる。
目次
第1章 かたち作りのルールを探る
第2章 巨視的なからだの成り立ちと遺伝子
第3章 設計図による建築作業
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Hiroshi
8
発生生物学の中心課題についての研究の一般向けの紹介書。著者の名は「ときんど」と読む。京大の名物教授だ。名前で検索すると京大広報誌「紅萠」の記事が読める。「彼がいなかったら日本の生命科学は20年遅れていた」といわれ、日本人初の国際発生生物学会会長に選出されたという。故人だが、旅立ちは紫色のスーツだった。記事の一読をお勧めする。生物の本性は多様性にある。だが科学は全ての生物に共通な普遍的な性質の理解へと驀進する。①かたち作りのルールを探る、②巨視的なからだの成り立ちと遺伝子、③設計図による建築作業、からなる。2022/02/08
茶幸才斎
3
受精卵から成体への発生過程における動物の形態変化が、どのような設計図と分子的実体及び相互作用に基づくのかについて解説している。勾配説によるプラナリアなどの再生現象の説明に始まり、ホメオ遺伝子による秩序だった形態形成制御、カドヘリンによる細胞間接着、アクチビンによる胚誘導と、94年の出版当時の発生生物学の要所を押さえた教科書のような本。私はその後の研究の進展やトレンドを知らないのだが、今となっては本書も古典扱いか。この分野では、ショウジョウバエの胚発生の図をやたらと目にする。当時も今も、変わらず気が滅入る。2013/01/10
黒い森会長
1
1994年だから20年以上前の本。ホメオ遺伝子とかたち作りの研究についての本。古典的生物研究から現代生化学における物質の同定研究への移行の様子がもっともよくわかる形態形成の分野。少し懐かしさも描く。この分野の一般解説書は少ないのではと思う。2017/02/03
Chemie
1
生物学とはいわば、普遍と多様という矛盾した二面のはざまの中での悩みの体験である、というのが私(筆者)の実感である/実験科学の成功はアイデアと技術の結合によって初めて可能となる。両方とも、時代あるいは科学のその分野の歴史の段階によって左右される。アイデアの方は際立った細胞の持ち主であれば、時代を超えることはありうる。技術の方についていうと、時代の条件はいささかきびしい。とりわけ、近年の生物学のように、アイデアの証明が結局は、物質の働きによる説明を要求される場合、このことは痛切である。2013/02/08
てぬてぬ
0
プラナリアからヒトまで。研究の歴史を紹介した本。形態形成への理解をもって、発生学から進化へとアプローチすることが出来るようになった。学問をやる人特有の、将来への希望に溢れてる感じに浸れる素敵な本。2017/05/06