内容説明
ダーウィンによって確立された進化論はどのように発展していったのか。分子生物学は進化論をいかに豊かにしたのか。進化の道筋は現在どのように考えられているのか。革命的な「分子進化の中立説」を提唱して世界の学界に大論争を巻き起した著者が、『種の起原』から中立説までの進化の考え方をやさしく説き、人類の未来にも想いを馳せる。
目次
第1章 生物の多様性と進化の考え
第2章 遺伝学に基づく進化機構論の発達史
第3章 進化の道すじをたどる
第4章 進化要因としての突然変異
第5章 自然淘汰と適応の考え
第6章 集団遺伝学入門
第7章 分子進化学序説
第8章 中立説と分子進化
第9章 進化遺伝学的世界観
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Hiroshi
7
世界の進化学の現状を纏めた本。1988年の出版であり、PCR法のできる前のものだ。ゲノム配列もわからないなか、科学者が如何に進化に取り組んでいったのかが判る。進化論はダーウィンにより始まる。その前にも「獲得形質の遺伝」の進化論をラマルクが唱えた。獲得形質の遺伝は完全に否定された。ダーウィンは「自然淘汰」による進化論だ。人為淘汰から類推して考えた。生物のネズミ算的増加は生存競争をおこす。卵を千個産む生物でも、その群れが個体数を現状維持している場合、親になれるのは1対のペアだけなのだ。他は捕食等で消えていく。2021/12/24
たらら
6
科学は日々進歩するものだから、つい新刊のほうに手が伸びてしまうものだが、やはり最新の概説書よりもご当人の書いた本だとつくづく思う名著。いまでは常識として扱われる分子進化の中立説がどういう背景の中で生み出されたのか、なにより生物進化を考える上で何が問題点なのかを理解するには最適。自身と中立説への反論に丁寧に答えて、分からないことは次世代に託しながら、実はかなり大胆な仮説もさりげなく提示される。★5つ。2009/07/30
jjm
4
イメージ図がほぼなく、文章だけなので、生物を学んでない私にはハードルが高かった。中立説も本書を読むだけはよくわからなかった。突然変異の中で進化に寄与するのは一部で残りは中立というのが中立説? この本を読んでいて、そう言えば中くらいの首の長さのキリンの化石が見つかっていないということを思い出して調べたところ、生息域が局所的な動物では実は不思議なことではないらしく、ダーウィンの進化論を否定するものではないらしい。地球外知性は存在するかの項で、人間は非常な幸運、偶然と述べられているが私はこれには同意しない。2019/05/22
一階堂
4
最後、さくっとヤバいことを言っているので、優生学に興味がある方は必読。2016/09/04
ぬーん
4
名著と言われているので読んでみた。面白い。ただ少々難しい感じもしますね。後半の数式は説明が省かれてることもあって理解してない部分あり。内容のボリュームはある。細菌は如何に高速増殖するかに適応したのでジャンクDNAをほとんど持たないというのには驚いた。最終章を読む限り著者は消極的優生には賛成らしいが、これはこれで今でも物議をかもす話である。出版当時は出生前診断の黎明期で羊水を採取していたようだが、今では母親の血液を検査するだけで胎児の遺伝子が分かる。2014/02/13