出版社内容情報
『文明論之概略』は,福沢諭吉の気力と思索力がもっとも充実した時期に書かれた最高傑作の一つであり,時代をこえて今日なお,その思想的衝撃力を失わない.敢えて「福沢惚れ」を自認する著者が,現代の状況を見きわめつつ,あらためてこの書のメッセージを丹念に読みとり,今に語りつぐ.読書会での講義をもとにした書下し.
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しゃん
17
本書上中下巻がなければ、『文明論之概略』を正しく理解することができなかったように思います。本書を読むことで、『文明論之概略』がどのようなパースペクティブを持って、どの位相でそれぞれ論を進めているのかがよく分かりました。本書のおかげで、福澤先生の卓見を知ることができるとともに、丸山先生の知的な凄さを感じました。末尾の「私たち日本人は、破綻に直面した現在の世界秩序にたいして新しい構想を「始造」する実験に堪え、それにふさわしい想像力を駆使できるでしょうか」という問いは、今も尚、鋭く問われているものと思いました。2017/04/14
トントン
14
一人のイギリス人は愚鈍である。二人のイギリス人はスポーツをする。三人のイギリス人は大英帝国を作る。一人のドイツ人は詩人であり、思想家である。二人のドイツ人は俗物である。三人のドイツ人は戦争をする。2021/12/05
かんがく
14
第八章「西洋文明の由来」、第九章「日本文明の由来」、第十章「自国の独立を論ず」という最も重要な部分を扱う。丸山の解説により福沢の凄さがよりわかる上、軍国主義時代に青年期を過ごした丸山の眼を通して描かれることで、福沢の主張がよりリアルに感じることが出来た。古典に接する際の態度も学ぶことが出来る良書だった。2020/04/14
Tai
8
宗教改革の原因は人智の進歩と懐疑の精神の発達/習慣の醸成を重視、ディスカッションの場をさかんに、政治が社会をつくるのではなく、社会が政治をつくる/次歩は初歩を支配する/愛国心、報国心、偏頗心/外国交際、活発発地の働きが必要、忍耐だけでなく智に基づく能動的な精神が必要になる/目的と手段の連鎖関係を認識する/異質文明との接触は歴史上二回あったが西欧的国家システムへの日本の加入は質が違う。また、西洋文明は不断の変化を続けている。「・・改進と云ふ可からず、或いは始造と称するも亦不可なきが如し。」2020/03/07
あかつや
8
いやあ面白かった。積んだまま埋もれさせなくてよかった。また読み返すこともあるだろうから、今度はあまり埋もれさせないようにしなきゃ。下巻は『概略』の第八章~第十章、そして頭に戻って諸言の部分の解説。なぜ福沢は書の結尾をこのような構成にしたのかとか、最後の章を書くにあたっての彼の入れ込み方の違いとか、すごく面白い話がたくさんあった。あと本書の結びの部分でおまけのように付け足されている「福沢の著述のなかにおける『概略』の位置づけ」が、なにげに役立ちそうな気がする。これを参考にまた別の福沢の本も探してみよう。2019/04/15