出版社内容情報
幌馬車が走り,銃声が響く一九世紀アメリカのフロンティア世界は,現代に生きる私たちを魅了しつづける.だが西部劇はこれまで,民衆の姿と時代の様相をどこまで忠実に描いてきただろうか.インディアン虐殺,アラモ砦の戦い,ゴールド・ラッシュの熱狂――史実と伝承の織りなす大西部の物語を,豊富な資料をもとに生きいきとつづる.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
62
40年ぶりの再読。やはり面白い。一級のアメリカ史家でありながら、とても平易な文章で、どんどん読ませるのはさすがというしかない。先住民(インディアンとの表記が時代を感じさせる)に関しては頻出する上に1章をさき、黒人奴隷、中国からのクーリーなどにも目配せを加えながら、探検、幌馬車、駅馬車、ゴールドラッシュ、カウボーイなどの、実際は比較的短期間であった各イヴェントを中心に章立てをして書き進める。章の頭にイヴェントごとの年表があるのもうれしい。これでもう少し地図や写真が入っていると申し分がないのだが。復刻を望む。2022/06/11
スプリント
11
アメリカの西部開拓はフロンティアといえば聞こえがよいですが、 その実情は侵略なのだということが再認識できます。 先住民の迫害やゴールドラッシュの影で崩壊する開拓民一族の悲哀など歴史の暗部を知りました。2016/10/15
糸くず
8
『物語 アメリカの歴史』と同じく、マイノリティからの視点に重きを置く著者の姿勢が反映された、西部開拓の光と陰の物語。第一章でルイス=クラーク探検隊の旅を綴るにあたって、途中から同行したインディアンの女性サカガウィーアの活躍に着目して描写する点からして著者の個性が存分に発揮されていて面白い。平和を望むインディアンの首長たちの嘆願、フロンティア社会における女性の役割の大きさ、モルモン教徒の迫害、ゴールドラッシュの狂騒、そしてインディアンの大虐殺。アメリカの気高さと野蛮さが見事に活写された名著だろう。2020/12/29
にゃん吉
5
新天地の可能性を信じ、過酷な大自然、艱難辛苦に挑む移民、進取、自主独立の気性の涵養、明白な天命とゴールドラッシュの剥き出しの熱狂、アメリカの膨張欲、ヨーロッパ諸国との領土争奪戦。その中で、ネイティブは、無視されるか、発展の障害としか見られない。西部開拓という事象に関する光と闇が、余すことなく且つ完結に記述された好著かと思います。2018/11/11
ジュンジュン
5
「明白な天命」の下、いざ西部へ!何ともロマンティックな響きに隠れた光と陰。野心に満ち溢れた数々の偉業とインディアンに対する残酷な仕打ちは鮮やかなコントラストをなす。ついでながら、中公新書版(中屋健一著)と項目は同じながら、読みやすいのはこちら。2018/01/30
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- 和書
- 迎え火の山 講談社文庫