出版社内容情報
数学は,適切な教え方さえすれば,すべての子どもに理解できるはずのものである.こうした観点に立って,明治以来の数学教育の欠陥を指摘し,数学の土台と思われる量,数,集合と論理,空間と図形,変数と関数について,ていねいに説明する.父母,教師ならびに日本の教育の現状を憂慮するすべての人びとに贈る.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
117
これは分かり易い本です。おしえかた、とくに遠山先生の水道方式という有名な教え方のエッセンスが書かれています。中学生にとっては若干は難しいのでしょうが、最初にこのような本を読んでおくといいのではないかと思われます。数学自体の内容は少ないのですが、図形のもつ意味などを分かりやすく説明されている気がします。2016/01/28
ほりん
21
【数学de読書】この本では,算数はまず数字から教えるのではなく,「量」から教えたほうが良いと言っている。「大きい・小さい」「暑い・寒い」など多種多様な「量」を認識させ,「数」へと導く。数字や計算を記号や技術としてではなく,タイルなどを使って可視化し,位取りなどを丁寧に教えていく。こんな風に教えてもらっていたら,文系の私も娘も,算数好きになっていたかも?と思った。その他「集合と論理」のマトリックスなど,頭の中が整理されるような感じも受けた。数学の世界に関する本をこれからも折に触れて読んでいきたい。2014/05/01
有沢翔治@文芸同人誌配布中
15
数学の点数が悪かったという人もいるのではないだろうか。もちろん得意不得意は誰にでもあるものなので、ある程度は仕方がない。しかし、学びのポイントを抑えておけば「勉強」は可能になる。 数学を学び直したい人のためには打って付けの入門書。多分、高校生からでも読めると思います http://blog.livedoor.jp/shoji_arisawa/archives/51506121.html2019/06/22
まつど@理工
14
小林道正さんが教師を目指す人に必ず勧めると書いていたので再読。p53の数学は筆算中心、暗算と数学とは無関係だと言っている部分は数学教育史的には「筆算軽視から筆算重視」への移行を企図したもの。例えば『中・高一貫の数学』という中学生向けの参考書は、この本を暗算できるぐらいまでやりこみなさい(3周はやれ!)と書かれている。 栗田哲也『暗算力を身につける』も合わせて読むと分かると思うけど暗算といってもそろばんのようなものではなくて数学の構造を頭の中で運用できるようにする、その過程で速く計算ができるという感じ。 2014/05/11
kenitirokikuti
13
1972年刊行の岩波新書。近現代日本の算数教科書の歴史が概説される。明治の大半は「和算」であり、明治38年に通称黒表紙『尋常小学算術書』(初期は教師用のみ)が作られた。クロネッカーの考えが取り入れられ、「量」を排除する方針で書かれた(序数を基礎とする)。大正にメートル法の採用など小さな変更を経て、昭和10年に緑表紙に(鶴亀算はここから)。その他、暗算と筆算の違い等が述べられる。この「暗算」は頭の中で筆算やそろばんをするのでなく、ことばで考えて計算するもの。暗算と筆算は全く異なるもの。そういやそうだなぁ…2018/03/24