出版社内容情報
人類の発生から現代にいたる広大な歴史を生き生きと概観する名著.白人文明中心思想を排し,人類全体の足どりを見とどけようとする本書は,昭和十四年,厳しくなる軍国主義の下で『世界文化史概観』の名で刊行された.該博な知識と豊かな筆力により興味あふれる歴史の世界に読者を誘う.上巻は人類の起源から十字軍までを扱う.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
シルク
5
ああ、なるへそ…とグルリと世界が様相を変える、モノクロの世界が急にカラーに色付くような知見がアレコレあった巻(翻訳も、上巻に比べると格段に良い印象)。特に産業革命期、機械が人力にとって変わったことが結果として労働者に何を、また如何にあることを要求するようになったか…に関する記述が鋭く、気持ち良い。「人間はもはや、何でもいいから力を出せばいいものとしては要求されるのでなかった。人間によって機械的になされえたことは、機械によっていっそう速く、いっそう上手になされるのであった。人間は今や、選択力や知性を働か2014/09/17
たらら
5
中世後期から現代へ。このあたりからは一筋の展開では語りきれないが、「産業」革命よりも「機械」革命のインパクトを丁寧にたどるところが見事。労働集約的な産業形態は段階的に生じうるが、巨大な蒸気機関をつくるにはそれに見合った巨大な鉄板を生み出さなければならず、その飛躍にこそ近代へのギャップがあると彼は考える。数カ月かかった道のりもしくは航海をほんの数日に変えてしまった交通・通信のギャップ。一挙に10倍に膨らんだ力。戦争への階梯を人類誕生、生命誕生と重ねて、そのいびつさを示すところに作家としての真骨頂がある。2011/05/21
seimiya
4
下巻は、うんざりするくらいに戦争、戦争、戦争。世界史とうたいつつも、著者がイギリス人ということもあり、ヨーロッパ世界中心の記述になっています。日本についてはほんの少ししか触れられていないけれど、外国人によって書かれた日本、というのは興味深かったです。2012/11/23
かみかみ
3
下巻は十字軍遠征からフルシチョフ政権まで。それまで極東の辺境の地にある日本の開国以降の急速な近代化を世界史上前例のない事象として捉えているのが興味深い。2018/03/05
トマス
2
下巻でH.G.ウェルズが書き上げたのは叙任権闘争から第二次世界大戦まで。まだ戦争中の1944年に出されたため、世界を諦めた悲観的な形で締めくくられている。一方、後継のG.P.ウェルズとポストゲートは1963年までを書き足して二次大戦を見直している。さらに2017年になってそれを読むと世界は大きく変わっているわけで、どの時点で歴史を語るかで見え方が全く違っていて面白い。下巻は年代的に情報量が多いためヨーロッパ中心の世界史という印象が強いが、宗教や権力、産業を大きな視点で歴史に位置付けていて読みごたえがある。2017/02/04