出版社内容情報
文化が違えばことばも異なり,その用法にも微妙な差がある.人称代名詞や親族名称の用例を外国語の場合と比較することにより,日本語と日本文化のユニークさを浮き彫りにし,ことばが文化と社会の構造によって規制されることを具体的に立証して,ことばのもつ諸性質を興味深くえぐり出す.ことばの問題に興味をもつ人のための入門書.
内容説明
文化が違えばことばも異なり、その用法にも微妙な差がある。人称代名詞や親族名称の用例を外国語の場合と比較することにより、日本語と日本文化のユニークさを浮き彫りにし、ことばが文化と社会の構造によって規制されることを具体的に立証して、ことばのもつ諸性質を興味深くえぐり出す。ことばの問題に興味をもつ人のための入門書。
目次
1 ことばの構造、文化の構造
2 ものとことば
3 かくれた規準
4 ことばの意味、ことばの定義
5 事実に意味を与える価値について
6 人を表わすことば
著者等紹介
鈴木孝夫[スズキタカオ]
1926年東京に生まれる。1947年慶応義塾大学医学部予科卒業、1950年同大学文学部卒業。専攻は言語社会学。現在、慶応義塾大学名誉教授
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kaizen@名古屋de朝活読書会
129
岩波新書愛好会】一つの言葉に一つの意味。 一つの言葉が、文化の違いによって、 複数の言葉に対応するとしても。 breakは、何かを力によって分けることを意味する。 日本語だと壊す,割る,折る,切るに対応することがある。 意味と対応する他の言語の用語は一つとは限らない。 それが文化の違い。 人称代名詞について詳しく解説している。 1973年に初版がでている。「おたく」についての記載が在る。自分で「おたく」という言葉を耳にしたのは1970年。2013/06/23
nobi
90
“ことば”に対して自らの目で見、気づき、いつも頭はフル回転している、そんな印象を受ける。欧米の言語学の見方にも毒されず、それが無意識の内に前提としてしまっている思考の志向に疑問を呈する。新書という形式とは言え、あくまで具体的で卑近な例から日本と主に欧米とのことばに現れている文化の差異を紹介。lipsとくちびる、waterと水、イスラム圏女性の鼻と口に関する叙述がない…。また辞書の限界。名詞の意味も定義もほぼ不可で動詞、形容詞等は可。圧巻は良く引用もされ数年に渡り研究したという日本語の自称詞と他称詞の構造。2019/02/03
katsubek
46
30数年ぶりの再読。さすがに事例として若干古くさいものもあるが、それが何であろうか。内容は今読んでも誠に新鮮であるし、書きぶりは中学生にも理解できるほどやさしい(部分もある)。言葉が世界を分節するための道具であり、言葉があって初めて私たちはものを認識できるのだと言うこと、また、言葉(文化)がちがうと、ものに対する認識も全く異なると言うことを、かくも明快に語ってくれる。読後感、すっきり。内容を隣りの誰かに語りたくなる本である。2013/11/17
常磐条
43
ことばの持つ「意味」と「定義」をめぐる議論が面白い。曰く、『ことばの「意味」をことばで伝えることは不可能』『ことばによる或る「定義」が正しいか、充分かということは、あくまでそのことばを使う目的と相対的に関係しているにすぎない』としたうえで、『動詞や形容詞(や前置詞)の方が、いわゆる名詞よりも「定義」しやす』い、とくる。それは『名詞が本質的に「定義」されにくい、多面的多価値的な存在である』のに対し、動詞や前置詞が『事物と事物の関係を表すことば』であるからだ。ぜひ、動詞を重視した編集的言葉遣いを意識したい。2015/12/29
楓
38
ものとことばについて鈴木さんは哲学的に「唯名論」と「実念論」の考え方から話を展開していた。世界中には様々な名前でありふれている。植物、動物、物体の動き、人間の動作、心の動作など微妙なことにも、いちいちそれを表す言葉がある。また、同じものでも国が違い言語が異なれば、別の言葉でよばれる。ではその境となるのは何か。言葉というのは、混沌とした、連続的で切れ目のない素材の世界に、人間の見地から、人間にとって有意義なしかたで、虚構の分節を与え、分類するはたらきを担っている、らしい。この本は少し難しいが、勉強になった。2023/08/30