出版社内容情報
「万葉集入門」として本書の右に出るものはいまだない.万葉の精神をふまえて自己の歌風を確立した一代の歌人たる著者が,約四百の秀歌を選び,簡潔にしてゆきとどいた解説を付して鑑賞の手引きを編んだ.雄渾おおらかな古代の日本人の心にふれることにより,われわれは失われたものを取り戻す.
内容説明
万葉集はわれわれ誰もが読むべき宝典であるが、巻二十まで読破しようというのは並大抵のことではない。歌壇の第一人者が、四千五百有余のなかから、すぐれた歌を選び、誰もが理解でき、味わえるように平易簡潔な解説を付した本書は、万人のための「万葉集入門」であると同時に、「万葉集精髄」を実現したことにもなる。
目次
いはばしる・たるみのうへの(志貴皇子)
かむなびの・いはせのもりの(鏡王女)
うちなびく・はるきたるらし(尾張連)
はるのぬに・すみれつみにと(山部赤人)
くだらぬの・はぎのふるえに(山部赤人)
かはづなく・かむなびがはに(厚見王)
よのつねに・きくはくるしき(大伴坂上郎女)
なみのうへゆ・みゆるこじまの(笠金村)
かむなびの・いはせのもりの(志貴皇子)
なつやまの・こぬれのしじに(大伴家持)〔ほか〕
著者等紹介
斎藤茂吉[サイトウモキチ]
1882年‐1953年。1910年東京帝国大学医科大学卒業。専門は精神医学。歌人
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
74
下巻は巻8以降から採られている作品が収められています。斎藤茂吉の好みの作品は偏っている感じがしました。柿本人麻呂や大伴家持が好きでかなりの歌が掲載されています。というかやはりいい歌は皆が認める感じなのでしょう。東歌も多く採られています。2015/09/16
獺祭魚の食客@鯨鯢
69
岩波本がほぼ揃っている神保町ブックセンターで珈琲を飲みながら。 新刊本を買う時は立読みしてよく吟味し「えいやっ」と気合いを入れて選びますが、帰宅後には代金を払う時の熱が醒めていることが少なくありません。 何か男女の恋愛と似ているように思います。 本書では万葉集の四千五百の一割を歌人 斎藤茂吉により秀歌として撰ばれています。歴史に即して並べていないため、目次を手掛かりに探します。 新元号選定以後折に触れて読み込んでいるつもりですが、既知の歌は僅かでした。まだまだです。2019/11/15
夜間飛行
63
《神なびの伊波瀬の社の喚子鳥いたくな鳴きそ吾が恋ひまさる》の「よぶこどり」は恋心を募らせる鳥だそうだが、一体どんな鳴き方をするんだろう? この鳥の実体を自分は知らないのに、歌に込められた気持を素直に受け取れるのは不思議である。茂吉はそれを喚子鳥という言葉の喚起力によるのだと説明する。もしかしたら、喚子鳥は実体を喪う事によって却って言葉としての命を得たのかも知れない。そもそも全ての書かれた言葉は展翅板に貼りつけられた蝶みたいに実体を喪っているともいえるが、そこに命を吹き込むのが写生ではないかと思ったりした。2014/11/13
スプーン
45
しみじみとした愛の歌が多く、愛の深さに今も昔も無いのがわかる。今回わかったのは「万葉集」とは、わたしや、あなたの、歌であるという事。1200年前に詠われた私の歌である。2019/03/08
しゅてふぁん
43
読み始めた頃は初期万葉は苦手だった。しかし最後まで読んでみると、初期の歌は言葉が難しくて読みにくい上に何を言っているのかよくわからない、でも素敵だったなと思えてきた。不思議だ。そのよくわからない魅力について、自分の中で答えが出せるくらい読み込んでいきたいと思える素敵な歌集に出会えて嬉しい。『弱い結句は万葉には絶対に無い。(P120)』と言い切れる斎藤氏が素敵です!2018/05/27