出版社内容情報
精神分析の四つの基本概念--無意識・反復・転移・欲動--の本質に迫る、ラカンのセミネールの記録。「無意識は一つのランガージュとして構造化されている」という定式を打ち立てた後、下巻では、転移と分析家、欲動と疎外、主体と〈他者〉の関係など、重要な問題が次々に検討される。文庫化にあたり訳文を全面的に見直した。
内容説明
「無意識は一つのランガージュとして構造化されている」という定式を打ち立て、精神分析の四基本概念の本質に迫ったセミネールの記録。下巻では、転移と分析家、欲動と疎外、主体と“他者”の関係など、重要な問題が次々に検討される。訳文を全面改訂しての文庫化。
目次
転移と欲動(分析家の現前;分析と真理、あるいは無意識の閉鎖;シニフィアンの列の中の性;欲動の分解;部分欲動とその回路;愛からリビドーへ)
“他者”の領野、そして転移への回帰(主体と“他者”―疎外;主体と“他者”(2)―アファニシス
知っていると想定された主体、最初の二つ組、そして善について
解釈から転移へ)
このセミネールを終えるにあたって(君の中に、君以上のものを)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
井蛙
5
〈確信〉を希求するデカルトに固有の欲望は、真理の真理性を担保するために「我思う」ところの主体とは別の〈知っていると想定された主体〉、つまり無謬の神を導入する(デカルトを読んだ人なら誰しもこの楽屋落ちに虚をつかれた記憶があるだろう)。まさに思考のデウス・エクス・マキナともいうべき神業。このようなデカルトの歩みは、彼自身がその端緒を開くことになる近代的精神のいう〈科学〉とは別のなにか、科学「なるもの」とでも呼ぶほかないものを目指している。それはつまり我々が〈科学〉と呼ぶあの知識の大伽藍の中へ、当の我々自身が→2020/12/13
amanon
4
前巻と同様、わりにサクサク読み進めることができたが、やはりその内容は殆ど理解できず。結局、本書におけるシニフィアンって?というところから理解できないのだから、最早お話にならない(笑)。もちろん、言語学におけるシニフィアンの意味くらいある程度理解できる。ただ、本書におけるシニフィアンの使われ方、その意味するところが、殆ど人を煙に巻くようなものだから、さっぱり頭に入ってこないという塩梅。この講義の趣旨は精神分析家を育てることだったそうだが、この内容で果たして分析家が巣だったのか?それでも再読したい気がする。2022/01/17
kana0202
3
歯ごたえありまくり。だが少しづつ何かを掴めば良いだろう。精神分析は生きるための地図なのかもしれない。愛とは、私とは、こんなありふれた問いが、止まることなく進み問われ続ける。列車に乗っている感じ。2022/12/22
白いハエ
1
おおむねラカン論として目にする議論が、この一冊に詰まっていた。その明晰さに惚れ惚れとする。精神分析における豊かで魅力的に思える概念に、自分はまさしく無謬性を志向していたのだと結論づいた。分析家と向き合う、分析家を神に仕立て上げる患者の欲望である。己の精神の全てを説明する何か、それによって極めてクラシックな意味でのチートじみたやり方で安寧を得るやり方──そういう夢。ある種、世俗的でありながら、デカルト的でもある。もちろん、そんなものはない。われわれの欲望はどこまでも〈他者〉に委ねられている……。2021/11/08
十文字
1
2000年に出版された翻訳が文庫として改訳版で出たので再読。 岩波はこれ以外にもいくつかラカンの講義録を出版していたはずなので、勢い余って全部文庫化していただきたい。2020/12/28