内容説明
「わたしは大きなひげをもった彼の顔を思いうかべる。それは無限にひきつけ、また無限につきはなすがごとくに見える…」。『ツァラトゥストラはこう言った』の名訳で知られる氷上英廣(1911‐86)の伸びやかな詩心にあふれた文集。ニーチェのテクストをその時代に丁寧に位置づけ、風景のなかを逍遙する静謐なニーチェを描き出していく。
目次
ニーチェの顔
犀・孤独・ニーチェ
アスポデロスの咲く野―ニーチェの遺産
ニーチェとエピクロス1
ニーチェとエピクロス2
ET IN ARCADIA EGO―ニーチェにおける英雄的・牧歌的風景
ニーチェにおける「大いなる正午」
ツァラトゥストラとゾロアスター
ニーチェにおける脱ヨーロッパの思想
ニーチェにおけるヘーゲル像
斎藤茂吉とニーチェ―日本におけるニーチェ影響史への一寄与として
芸術の夕映―鴎外・ニーチェ・ワーグナー
『悲劇の誕生』私解―ニーチェとボードレール
漁樵問題―ニーチェとハイデガー
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
踊る猫
28
古き良きエッセイ。別の良い方をすれば、格調高いエッセイ。教養を求める青年が好んで読んだ、背筋が伸びるような生硬さが読んでいてくすぐったく感じられる。ニーチェは面白そうだけれど、どれから読んで良いのか分からないという方にはこうしたエッセイから入るのもお薦めできるのではないか。ニーチェ研究者としての著者の観察眼と博識は流石なので、分かりやすい透明度の高い文章がこちらを優しくニーチェの世界へと導いてくれる。ニーチェのレトリックに酔い痴れ、いたずらに現世にニーチェを引きずり降ろそうとする類著にはない清らかさがある2020/03/19
Ex libris 毒餃子
6
ニーチェにかかるエッセイ集。ニーチェ研究者が書いた本だけあって、ニーチェの様々な面を知ることができた。『ギリシア哲学者列伝』読もうかな。2019/12/17
ポカホンタス
3
茂吉の研究のため、「斎藤茂吉とニーチェ」のみ読んだ。非常に丁寧に、実証的に、茂吉とニーチェとの関連の詳細を調査し、著者なりの判断が下されている。大変参考になった。他のエッセイもちらちら見ると、著者の守備範囲が古今東西幅広く、それらがバランスよく配置されている。すごい人だ。2020/05/05
Yuki
1
亡霊的な読解ばかりがなされるニーチェについて、共時性の下に据える試み。人物伝でもなく、解釈論でもなく。/氷上先生とニーチェの関係性があるからこその比類なき名著。2022/09/15
シロクロ
0
斎藤茂吉に対するニーチェの影響なんて全く知りませんでした。 2019/11/02