出版社内容情報
マルクスが初めて市民社会の根底たる資本主義経済に鋭いメスを加え,真の人間解放の道を明らかにしようとした研究の草稿である.後に『資本論』に見事に結実する若きマルクスの鋭い問題意識と洞察に貫かれた本書は,マルクスを研究する上に欠くことのできない文献である.詳細な注釈および解説を付す.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
wadaya
10
再読。資本論を凝縮したような書。資本論は長過ぎる(笑)この本は経済学の本のようで実は哲学の書。僕は若い頃から「等価交換」を存在論と捉えていたので、相対論にまで及ぶ思想は読んでいて飽きなかった。噛み砕くと、マルクスが資本主義経済に警鐘を鳴らしたのが資本論で、それを実践したのが社会主義国家。だが社会主義経済は混迷し、マルクス主義は時代遅れと言われた。けれども今、資本主義経済の格差矛盾が危惧される。その行き着く先が革命だとすれば、戦争の火種になりかねない。経済学から人間の存在を考えさせる、最高の哲学書だ。2017/09/27
Ex libris 毒餃子
9
大学生のときに買ったけど、全く歯が立たなく積読していましたがマルクス生誕200年ということで読破。多少、分かるようになってました。テーマごとに記述がされているので、その点は読みやすい。マルクスの問題意識はやはり、今もアクチュアルだと思います。それは現代の労働の問題点が常に持続しているからだと思います。または、日本における労働意識の低さなのかもしれません。となると、一概に経済学の射程に収まらないのが、マルクスの論点のスゴさでしょう。2018/07/14
またの名
8
購入した途端に新訳が出る罠。高度な哲学原理としてではなく、支配的システムの陰険なイヤらしさに対する批判スタイルとしての自由間接話法(独語にはない文法概念)の使い手で最強なのが、マルクスでは。学術の作法としては叱られるような恣意的にも見えるブルジョア経済学からの引用は、そもそもマルクス的な立場を恣意的だと断じて排除する不可視の前提を明らかにして転倒するための、外の思考の戦略的実践だった。ヘーゲルから引用され批判的に応用された疎外概念を、当時の貧困状況に限定せずに現代風にアップデートするのもまた、マルクス的。2014/01/11
うえ
4
解説は城塚登による。「フォイエルバッハの関心は、宗教と哲学へと集中していたから、彼が「人間の自己疎外」というとき、それは思惟の上での、すなわち意識の内部での「疎外」を意味した…マルクスの関心は、政治や経済と直接に結びついて市民社会のなかに現実的に活動している人間へと向けられていた。したがって、フォイエルバッハによる「ヘーゲル哲学の逆転」、つまり感性的・現実的な人間の立場に双手をあげて賛成し、「人間の自己疎外」という考え方をみずからのものとしながらも、フォイエルバッハの立場に満足することはできなかった。」2024/04/17
それん君
3
スターリン後のソ連や文革期の中国は原始的な共産主義、「粗野な共産主義」に近いと思う。 マルクスが資本主義の後に想定したような社会ではない。 (p126〜131,岩波)2021/02/04