出版社内容情報
多くの自由都市が覇をきそいあう十五―十六世紀のイタリア.マキアヴェッリ(一四六九―一五二七)はフィレンツェ市政庁の書記官として政治的辣腕をふるったが,晩年に至って失脚し,失意のうちに本書を執筆した.いかにして政治権力を獲得し,また保持・伸長するかという問題を倫理の観点を排して冷徹に論じる.近代政治理論の淵源.
内容説明
ルネサンス期イタリアの政治的混乱を辛くも生きたマキアヴェッリ(1469‐1527)は外交軍事の実経験と思索のすべてを傾けて、君主たるものが権力をいかに維持・伸長すべきかを説いた。人間と組織に切りこむその犀利な観察と分析は今日なお恐るべき有効性を保っている。カゼッラ版を基に諸本を参照し、厳しい原典批判をへた画期的な新訳。
目次
君主政体にはどれほどの種類があるか、またどのようにして獲得されるか
世襲の君主政体について
複合の君主政体について
アレクサンドロスに征服されたダレイオス王国で、アレクサンドロスの死後にも、その後継者たちに対して反乱が起きなかったのは、なぜか
征服される以前に、固有の法によって暮していた都市や君主政体を、どのようにして統治すべきか
自己の軍備と力量で獲得した新しい君主政体について
他者の軍備と運命で獲得した新しい君主政体について
極悪非道によって君主の座に達した者たちについて
市民による君主政体について
どのようにしてあらゆる君主政体の戦力を推し量るべきか〔ほか〕
1 ~ 3件/全3件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
88
「世襲での君主」と「新しい君主」について、いかに君主となるか、またいかに君主で居続けるかについて、細かい場合に分けて述べている。書記官であった時代に、フィレンツェの国使として各国の王や要人達と会い、各国の状況を見ていた彼が、政変により田舎で暮らし始めた時に一気に書かれた書物。宗教を否定はしていないが、教皇領をも権力の一つの場として論じている。君主は愛されるより恐れらるべきだが、憎まれては政治は続かないなど、極めて現実的だ。ここで新しい君主として彼が好んで例をあげるのがチェーザレである。2015/03/09
Willie the Wildcat
66
共和制vs.君主制。最後の最後は、常に住民の支持と感情に依存。故に政体とは支える人間。”首”の挿げ替えも、安心を齎す仕組み。信頼と信用の積み重ね。但し、言語、風習、そして宗教などが異なる地域の統治リスク。結局、知力vs.軍力、つまり安心vs.恐怖のバランス。極論の1つの「血筋の抹消」。KS経済学恩師のコメントが脳裏に蘇る。否定できない現実が怖い。最後のエッセンスである「運命と神」の件。人の末路は自らの手に!戦国時代真っ只中の官僚提言、時に民衆を侮る表現が鼻につく・・・。2016/03/17
まちゃ
63
マキアヴェッリの「君主論」は知っていましたが実際に読んだのは初めて。あらゆる時代の、あらゆる政治組織の中で、運命に苦しみもがく者の指針となる普遍的なものであったから現代まで残ったのでしょうね。何か普遍的な教訓が得られればと思います。「君主は、慕われないまでも、憎まれることを避けながら、恐れられる存在にならねばならない」なんて、冷徹な人間観察からでた言葉だと感じました。本書は「君主論」本文、と訳者解説、詳細な訳注で構成されています。多くの人の研究成果に基づいた多量の訳注には驚きました。2020/10/24
Miyoshi Hirotaka
51
中世ヨーロッパ後期。地球が動いているといっただけで裁判にかけられたように教会がまだ絶大な権力を振るっていた。一方、国内を統一した順に大航海時代へと突入。一人の人間の欲が組織という仕組みを通してストレートに、そして、最大限に発揮された。それだけに、国は奪うか、奪われるかのせめぎ合い。同盟も忠臣も信用には値しない。リーダーは孤独。さらにその質が国の命運を分け、自身の命を守った。利他の精神が組織の行動規範になるのは君主論から約500年後だが、ここで発見された組織の原理原則は、今日でも恐るべき有効性を保っている。2016/01/06
にいたけ
46
「目的の為には手段を選ばないこと」をマキャベリズムと教わり、それゆえ読むのを敬遠していた本書、読書会の課題本でなければ手に取らなかった。マキャベリの冷酷なイメージは後付けであり、本書は再雇用の為の論文なのだそうだ。そのため大袈裟な表現となった訳。そう思うと人の良いおっさんに見えてくるから不思議😆人の上に立たざるを得ない人は読んでおいて損は無い。色々読んでみたが岩波訳が一番わかりやすかった。2021/04/04