内容説明
「存在」の意味を根底から問い直した、二〇世紀最大の哲学書。「現存在」の基礎的分析を経て、本巻からは「現存在と時間性」の考察が始まる。「死へとかかわる存在」「良心の呼び声」「決意性」を契機に、現存在の全体性と本来性へと接近し、時間性の問題群も予示される。
目次
序論 存在の意味への問いの呈示(存在の問いの必然性と構造、ならびにその優位;存在の問いを仕上げるさいの二重の課題探究の方法とその概略)
第1部 時間性へと向けた現存在の解釈と、存在への問いの超越論的地平としての時間の解明(現存在の予備的な基礎的分析;現存在と時間性)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
71
2巻は正直、ちんぷんかんぷんすぎて頭を抱えた事から3巻を読むのが不安だった。しかし、302頁の「良心を持とうと意識することは、むしろ、事実的に負い目あるものとなることを可能とするためのもっとも根源的な実存的前提である」という一文に心の中を覗かれたようでドキリとした。何故なら、弟の愚痴や親の喧嘩に中立な立場にいたり、悲惨なニュースに顔をしかめる時、どうしてもその言動には面倒を抱えたくないためにその立場に甘んじることで積極的に解決に動こうとしない自分を意識してしまうから。勿論、これも解釈違いかもしれんが・・・2018/08/01
ころこ
47
〈なお~ない〉〈おわること〉「未済」「おわり」「気づかい」「負い目」などが登場しますが、これらの否定性によって存在が浮かび上がるという構造になっています。大体が「死」からしてそうですが、死をいい換えた言葉が時間ということになるのでしょうか。人間における時間の有限性が否定性として措定されることによって時間が論点になっているだけで、時間について純粋に考察がされるわけではなさそうです。両親の影響やハイデガーが神学を志していた時期があったようで、いわゆる否定神学的な思考のクセは色濃く出ているのではないでしょうか。2022/02/16
chanvesa
32
「先駆的決意性とは、死を『克服する』ために案出された逃げ道ではない。・・・良心をもとうと意志することは死へとかかわる存在として規定されたが、この件が意味するところもまた、世界逃避的な隠蔽ではまったくない。むしろ幻想をもつことなく『行為すること』への決意性へと導くことである。(390頁)」負い目と良心の結びつき(302頁)はここで死と結びつく。そして決意性という無気味なまでの力強さをも巻き込む。ここにある種の感覚的な危険性を覚える。2021/08/13
かんやん
31
予備的分析では、平均的日常性を着手点としていたために、現存在を本来的全体性に於いて捉え損なっていた。そこで現存在の不可能性の可能性(もはや現存在し得ない可能性)である死について実存的に分析されることになる。配慮的に気づかわれる世界へと頽落しながら、現存在は死を回避している。そこで死へと関わるためには、死を可能性として露呈させなければならない。このような関わり(先駆)により、現存在の日常の頽落したあり様が露呈され、本来的な自身である可能性が開かれる。不安を感じつつ、死へと関わる自由における自分自身である。2022/05/02
春ドーナツ
15
減らない玉葱の皮むきみたいな文章に慣れることはできないけれど慣れてくる。日常生活が読書を中断させるときに、いつもよりそのことが鼻につく。ハンバーガーショップの店員の受け答えの連続が、店内で流れる音楽が妙に耳を刺激する。途中で変なふうに皮がめくれるのが嫌だから、とにかく私はすごく集中したいのだ。きれいにむけると、もっときれいにむきたくなる。(四)の前に挿入された「解説」を読むと哲学に人間味がわく(個人的に)。神学的要素がシャットアウトされていることや、「時間」が導入された途端に執拗に反復される死について。2022/12/11