出版社内容情報
『プロレゴーメナ』を書き終えてから十年の間に発表した彼の歴史哲学に関する小論文四編.そこでは「啓蒙とは何か? 」を始め,人類の究極の目的とは何か?各人の自己の分に応じて人類の進歩につくすことがいかに大切であるか? 等を簡明に説きつつ,当時の宗教政策に対して痛烈な批判を加える.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
42
人と動物とを分けるものは何か、人の普遍性。原文も難解なドイツ語だということだが、日本語でもじゅうぶん骨が折れた。2016/04/02
藤月はな(灯れ松明の火)
31
初めてのカント著作でしたが心配を他所に読みやすいのでびっくりしました。カントの思想で有名な、「損失を被りたくないから行動する」の己の利益重視の仮言令法ではなく、「せなければならぬ」という道徳的な動機を目標にする定言令法で成立する義務論、世界平和のための後の国連へ繋がる機関の考察、己の自由意志による行動の責任性、ルソーの公益の利益を目指す一般意志=法を守ることで自分も保証できることなどがぎゅっと濃縮されています。2013/07/11
耳クソ
11
「万物の終り」にある「自然的な終り」が人類補完計画にしか見えないことを自己批判します。2021/03/13
D.Okada
11
『啓蒙とは何か』。カント自身「恐らく啓蒙されつつある時代」と述べており、すっかり啓蒙された時代とは現実的にはありえなくて、大事なのはその達成に向けて努力を重ねることである、と思う。〈啓蒙〉とは、「人間が自分の未成年状態から抜け出ること」という〈理論〉であるから、若い世代が「他人の指導なしに悟性を使用しよう」と、自分自身で自由に考える、という〈実践〉は大変大事で、それはその時代の独創的な創造性につながるのではないか。2010/11/05
めんま
9
歴史哲学、時間論、道徳と幸福、理論と実践などのテーマが論じられる。道徳哲学は、幸福になるための方法を追求するのではなく幸福に値するようになるための方法を追求する学問であるというテーゼが特に面白かった。現代は人間の幸福を第一義に置く傾向にあるが、環境問題などは人間の幸福に反する場合がある。そういう人間を中心にしづらい問題を捉え直すうえで、道徳哲学的な観点が役に立ちそうだと思った。2021/03/28