出版社内容情報
アリストテレースの『詩学』は悲劇の機能・構造を重視し,英雄をわれわれと同じ人間として扱い,神・運命などギリシア文学の伝統的な要素や道徳観を考察の対象から省くことによって文学理論としての普遍性を持つにいたった.後世のヨーロッパ文学,特にフランス演劇に大きな影響を与えたホラーティウスの『詩論』を併収.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
lily
121
詩人、作家の心得。だけど、あれれ、いたって普通のことで、裏技や秘法はなくて、基本に忠実なチェックリストとしての使用法くらいが丁度良いのでは?例えば、悲劇の構成要素はなるべく多く取り入れることとか「詩は美しいだけでは十分ではない。それは快いものでなければならない。」えー!全然発展がないじゃない?!2019/08/04
syaori
61
『詩学』を読むために。作者は詩作は再現だとし、主にその最高のもの・悲劇について論じます。悲劇とは人間の行為と人生の、緊密な因果関係を持った「高貴な行為」の再現であるべきで、行為者達が引き起こす「あわれみとおそれ」による感情の浄化(カタルシス)を目指すもの。同時に悲劇は個別的なことを通し「普遍的なものを語る」点で同様に個別的な事象を語る歴史とは異なり、普遍的なものを目指す哲学ともカタルシスを目指すという点で違った価値を持つものだと示します。それらの指摘は、文学とは何かということを改めて顕示してくれました。2021/09/17
イプシロン
33
アリストテレスの『詩学』は一種の「芸術論」であろう。人間は自由意志の生きものである。人間は非本能的な生きものであるというアリストテレスの思想から生まれた、自由意志による自然の模倣こそ人間の本性であるということを根底に据えて読むと、彼の天才ぶりが読みとれるのだろう。韻律は自然界にあるリズムであり、楽曲は自然界にある音階や音程の変化であり、因果関係はそれらの理論化として見るなら、韻律、楽曲、舞踏(因果関係)の三要素をもつ歌劇が芸術の最高峰であり、人間の本性を高い次元で表現したものであると言えるのだろう。2019/03/30
拓也 ◆mOrYeBoQbw
33
古代学。評論。ギリシア時代のアリストテレス『詩学』と、ローマ時代のホラティウス『詩論』を収めた一冊。前者はエーコ『薔薇の名前』の副読本としても重要ですね。『詩学』の中で触れられてる物で実際に私が読んだのは『オイディプス王』『イリアス』『オデュッセイア』くらいで、他の演劇や叙事詩は本筋を知るくらいですが、アリストテレスの論理的組み立てと分類からとても理解し易く、訳注が詳しくとても便利な一冊です。『詩論』の方は詩に関する警句や寓意と言った感じ。ホラティウス独特の言い回しですが軽く読める作品です(・ω・)ノシ2019/03/29
茉莉花
31
とっても良かった!物語を書くのが好きな自分にとっては結構ビンビンきた!最初は訳の分からない人名や専門用語(しかもギリシャ語)が多く出てくるので読めるかなぁと思ったけど悲劇や喜劇とはなんぞやというあたりから徐々に興味を持ち始めた。また、ギリシャ神話を度々交えながら優れた悲劇とは何かを語ってくれた。確かに世の中には誰でも書けるような稚拙な作品が数多くあるがギリシャ神話ほど人の度肝を抜き、魅了し、神秘的でダイナミックな作品は他にはないんじゃないかなと私は思う。私もそのような優れた悲劇が書けたらなぁと思うよ笑2016/03/05