出版社内容情報
「徳は教えられうるか」というメノンの問は,ソクラテスによって,その前に把握されるべき「徳とはそもそも何であるか」という問に置きかえられ,「徳」の定義への試みがはじまる…….「哲人政治家の教育」という,主著『国家』の中心テーゼであり,プラトンが生涯をかけて追求した実践的課題につながる重要な短篇.
内容説明
「徳は教えられうるか」というメノンの問いは、ソクラテスによって、その前に把握されるべき「徳とはそもそも何であるか」という問いに置きかえられ、「徳」の定義への試みがはじまる。「哲人政治家の教育」という、主著『国家』の中心テーゼであり、プラトンが生涯をかけて追求した実践的課題につながる重要な短篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のっち♬
135
ソクラテスが金と権力を求める青年相手に「徳は教えられうるか」について対話する。早速「それ自体はそもそも何であるか」という転換は初期対話篇に共通する。探求のパラドックスに対する想起説の提示は本書のポイントだが、魂の不死はここでは踏み込まない。論点も「どのような性質のものであるか」に屈折したりと仮説立てが目立ち、思想や理論展開の試行錯誤を含めて後続の著書へ繋がる重要なモチーフが詰まった実験的な対話篇と言える。「正しい思わく」と「知識」の区別に関しても、政治につながる重要性は仄めかしつつも着地点はかなり暫定的。2021/10/20
Gotoran
58
本書で再読。「徳とは何か?」というテーマ、徳を定義しようとして知識と信念、学問の方法、魂、善をめぐってソクラテスとメノンの対話・議論が展開されていく。「初等幾何学問題の解を導く手法から魂は不滅でわれわれはかつて学んだ事柄を想起するだけだ(想起説)。」「ひとが何かを知らない場合にそれを探求しなければならないと思うほうが、知らないものは発見することも出来なければ、探求すべきでもないと思うよりも、われわれはよりすぐれたものになり、より勇気づけられて、なまけごころが少なくなるだろう。」(ソクラテス)が示唆に富む。2021/06/07
ヴェルナーの日記
39
もしプラトン哲学を学ぶ上で、何から読み始めたらよいのか?と、自分に聞かれたら、本作「メノン」を薦めるだろう。何故なら、プラトンの最大の作品「国家」に連なるからであり、本作の思考法がプラトン哲学の基礎となっているからである。執筆年代自体は、中期の初めの頃とされ、「パイドン」、「パイドロス」の前段に当たり、「ゴルギアス」の後段に位置するが、本作にはプラトン哲学に欠かせないアレテー(徳)ついての問答であり、アナムネーシス(想起)と、ヒュポテシス(仮設)という思考方法が説かれてあるからである。2013/11/25
イプシロン
33
(再読)ソクラテスの思う徳、アリストテレスの思う徳を自分なりに把握したので、プラトンの思う徳を確認するために再度手に取った一冊。しかし解説などから考えるなら『メノン』においては、プラトンは自説と言えるような徳の定義には至っていないということになるようだ。だからといって本作が無意味な著作だということではない。なぜなら「想起」や「仮定」という、後の思想哲学にとって非常に重要なことを提示しているからだ。特に仮定をもちいて仮説を立てるという論証法は、現代では当たりまえの論理的思考形式であるからだ。とはいえ、2021/04/28
イプシロン
31
(三回目の読了)で、本著がプラトン対話篇の入門書としてだけでなく、哲学や学問とはいかなるものか? という非常に重大な定義を投げかけている著作であることに気づき驚嘆した。しかし、哲学はいかなるものか? は冒頭からはじまる徳とは何か? を探求するところで述べられているので比較的解りやすいが。学問とはいかなることか? については熟読しないと読み落とす危険があるだろう。なぜなら、現代人のわれわれは、そもそも学問とはいかなることか? という定義を考えることなく学問をしてきている状況が当たり前になっているからだ。2023/05/16