内容説明
アンドレ・バザン(1918‐1958)はフランスの映画批評家。サイレントからトーキーへの移行に際し批評の分野で新時代を開き、自ら創刊した「カイエ・デュ・シネマ」で健筆をふるった。本書は彼の映画理論・批評の集大成の書である。上巻にはモンタージュの拒絶、映画と演劇の関係など映画における“現実”とは何かを追究した論考を収録。
目次
写真映像の存在論
完全映画の神話
映画と探検
沈黙の世界
ユロ氏と時間
禁じられたモンタージュ
映画言語の進化
不純な映画のために―脚色の擁護
『田舎司祭の日記』とロベール・ブレッソンの文体論
演劇と映画
パニョルの立場
絵画と映画
ベルクソン的映画、『ピカソ 天才の秘密』
『ドイツ零年』
『最後の休暇』
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
岡本正行
76
映画大好きである。著名な小説の原作と映画化されたものとが、全然イメージが異なることもある。それはそれで、そういう見方と自分自身の感じ方の問題である。まったくよく似た感想を持つものもある。それでも映画は一度は観ておきたい。例えば、シェークスピアの『ロミオとジュリエット』、私は、高校一年だったか、原作の方は、当然、日本語訳、どれでも感じ方は同じだった。簡易な英語で読んで視ても、結局は同じ感想、しかし、人によって違うのが当たり前かなとも思う、あそこまで大衆的になっておれば別かも。『カラマーゾフの兄弟』は全然2024/03/27
しゅん
14
カイエデュシネマ首謀者、ヌーヴェルヴァーグの父。映画を変えた男の評論集ということで期待パンパンで読んだが、さすがの名著。全く裏切らない。藝術への絶対的な信頼、いや、信仰に支えられた精神は、映画に向けて至上の愛を注ぎながらも、絵画・小説・演劇・写真を決して貶めない。各ジャンルとの差異を明確にしながら、共存による更なる進化を夢見る。モンタージュの否定的側面を描き出し、サイレント原理主義を反駁する言葉は今読んでも鋭い。現代に生きていたとしても、バザン先生ならこう言うだろう。「映画はまで発明されていない!」2017/01/22
藤月はな(灯れ松明の火)
13
映画をあんまり、観ていないのにこういう評論に手を出してしまいましたf^_^;でも映画鑑賞のきっかけになった大好きな『駅馬車』にモーパッサンの『脂肪の塊』と対比されていたのが嬉しかったです。2015/04/08
ラウリスタ~
11
1975年フランス。非常に面白い。昔の名作の紹介ではなく、映画とはそもそもどういった存在なのかについて考える。映画は決して新しい芸術ではなく、数千年前から潜在的にあった「完全な映画」への道を塞ぐ、各種の技術的問題が取り除かれてきた歴史であるとか。『ブーローニュの森の貴婦人たち』が実はディドロの『運命論者ジャック』から台詞をコピペしているとか、小説と映画、演劇と映画、絵画と映画との関係についても詳述されている。あの時代のフランス映画ってこういうとっかかりがないとちゃんと観れないな。2015/03/23
乙郎さん
9
取り扱い注意の代物。下手なことを書いては映画狂にフルボッコになる。色々聴く限りでは後年の批評家によって乗り越えられているような印象もあるが、一読するとわかりやすい文体もあってか、現代でも映画を捉え直す際に役に立ちそうなアイディアに溢れているし、自然ドキュメンタリーや教育映画、小説、絵画、演劇といった映画周辺から話をはじめ映画そのものに迫っていくような感覚も素敵だった。改めて精読したい。2024/01/13