出版社内容情報
『年代記』はローマ帝国初代の皇帝アウグストゥスの死(紀元一四年)から筆をおこし,以下ティベリウス帝からネロ帝の死(六八年)に至る四代五十五年の治世を物語る.人間の本性に肉迫してやまぬ洞察力,類まれな描写力.――この史書をひもとく者は,あたかも一篇の秀抜な歴史小説に接するかのごとき感を深くする.
内容説明
『年代記』を読みすすむ者は随所で劇的な事件の目撃者となる。侍医と結託して夫クラウディウスを毒殺するアグリッピナ。刺客をさしむけて我が母アグリッピナを亡き者とするネロ。帝都ローマの大半を焼き尽くした大火。かつての教え子ネロに命じられ泰然自若として自ら死につく哲人セネカ。どのページをくっても、知と毒薬のにおいが立ちのぼってくる。
目次
第2部 クラウディウスとネロ(紀元四七年;紀元四八年;紀元四八‐四九年;紀元四九‐五〇年;紀元五一年;紀元五二‐五四年;紀元五四‐五五年;紀元五六‐五七年;紀元五八年;紀元五九年 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬弐仟縁
8
「クラウディウスは狼狽した。息子の家庭教師で最も立派な人をみんな、追放刑やら死刑に処した」(89-90頁)。平凡な家庭教師ならとっととやられていたに違いない(苦笑)。「美徳のいくつは、人々の反感を買う。たとえば強情一徹な謹厳さとか、人の好意に屈しない堅固な節操とかがそうだ」(251頁)。反感とはなかなか難しい性質で、一筋縄にはいかないのだろう。2013/05/07
よしひろ
7
日本の弥生時代の時期に、ローマではこのような優れた歴史書を書く人物がいたことにローマ帝国のすごさを感じた。2016/03/31
よしひろ
6
毒殺、陰謀、刺客。倫理観を疑いたくなる事態の連続に、統治者はどんな感覚を持っていたのか。ネロ帝も命を狙われて、自害。エジプトをも含む巨大なローマ帝国の命運を担う人材はまだこれから出てくる。2015/12/29
シンドバッド
5
本書を歴史書とするか、文学書とするかは意味が無いのかもしれないが、タキトゥスの正に『著作』。國原吉之助の訳及び失われた部分の補完など、完璧と感服しきり。2013/08/16
本とフルート
4
次々と展開される古代ローマ帝国の数々の出来事に息を飲んだ。血腥い陰謀あり、鷲旗を掲げた戦あり、とページを繰るのに足る話題には、事欠かない。これからどうなるのかを知っていても、夢中になってしまった。大事な箇所が欠損していることがとても悔しい。セイヤヌスとネロの最期に、カリグラの治世も読みたかったのに。2020/09/26